ワニス(読み)わにす(英語表記)varnish

翻訳|varnish

デジタル大辞泉 「ワニス」の意味・読み・例文・類語

ワニス(varnish)

樹脂を溶剤に溶かした塗料。顔料は含まず、光沢のある透明な薄膜を形成するもの。ニス。仮漆。
[類語]塗料ペンキペイントラッカーエナメル

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精選版 日本国語大辞典 「ワニス」の意味・読み・例文・類語

ワニス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] varnish ) 樹脂を溶剤にとかして製した塗料。樹脂を乾性油とまぜ、他の溶剤で薄めたものを特に油(あぶら)ワニスという。ニス。〔医語類聚(1872)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ワニス」の意味・わかりやすい解説

ワニス
varnish

透明塗料のこと。俗にニスともいわれる。通常,透明塗料は塗膜になる主成分(塗膜形成主要素)と副成分(塗膜形成助要素)とを溶剤に溶解して作られ,顔料は含まない。塗膜形成主要素には重合油,天然樹脂合成樹脂セルロース,ゴムの誘導体など,高分子物質が使用される。塗膜形成助要素には,可塑剤,乾燥剤,硬化剤,皮張り防止剤,増粘剤,はけ目防止またはレベリング剤,たれ防止剤,防腐剤,防カビ剤,防食剤,紫外線吸収剤等多種類の化合物がある。これらを塗料添加剤ともいう。塗料の性能はワニスの特性が重要な鍵になっている。

塗膜形成主要素により,次のように大別される。(1)油ワニスoil varnish 油性ワニスともいう。樹脂と乾性油とを加熱融合し,溶剤,乾燥剤を添加したもの。樹脂としては,アンバー(コハク),コーパルロジン,エステルガム(ロジンを多価アルコールでエステル化した樹脂)などの天然樹脂,およびロジン変性マレイン酸樹脂,フェノール樹脂石油樹脂クマロン樹脂などの合成樹脂が使用されるが,最近,天然樹脂の使用量は少なくなっている。樹脂に対する乾性油の比率が1.5以上のものを長油ワニス,1.0以下のものを短油ワニス,その中間のものを中油ワニスという。長油ワニスは主として屋内の木材透明塗装に,短油ワニスは主として塗装下地材料の調整に用いられる。油の多いほうからスパーワニス,ボデーワニス,コーパルワニス,ゴールドサイズと称する。(2)フタル酸樹脂ワニス アルキド樹脂および変性アルキド樹脂に乾燥剤を加えたもの。建築,車両等の木部透明塗装に用いられる。(3)アミノアルキド樹脂ワニス 屋外機器等の仕上げ塗装,屋内機器のエナメル塗装仕上げ,金属透明塗装用。(4)ポリエステルワニス 不飽和ポリエステル樹脂を塗膜形成主要素とするもので,家具,楽器などの木工塗装に使用される。(5)塩化ビニル樹脂ワニス,塩化ゴムワニス 船底部に使用される。(6)その他のワニス 以上の5種のほかJISの塗料用語に示されているワニスには次のものがある。(a)揮発性ワニスspirit varnish 天然樹脂をアルコールを主体とする溶剤に溶かして作ったワニス。自然乾燥で,短時間に溶剤が蒸発して塗膜を形成する。セラックをアルコールに溶かしたセラックニスラックニス),ダンマルをミネラルスピリットに溶かしたダンマルワニス等がある。(b)黒ワニスbituminous varnish,black varnish ビチューメンを塗膜形成主要素とするワニス。耐酸黒ワニスは耐酸性が優れているもの。(c)結晶ワニスcrystallizing varnish,feather weave varnish 結晶模様に仕上がるワニス。重合不十分の中国産キリ油を塗膜形成の主成分とし,燃焼生成ガスを含む空気中で焼き付けて仕上がる。(d)コアーワニスcore plate varnish 電気機器の鉄心板の表面に起こる渦電流損失を防止する目的で,ケイ素鋼板に塗る加熱乾燥性の電気絶縁用のワニス。塗膜形成要素として樹脂,アスファルト,乾性油を用いて作る。(e)コイルワニスcoil varnish 電気機器のコイルの含浸,および仕上げに用いる電気絶縁用のワニス。自然乾燥用と加熱乾燥用とがある。樹脂,アスファルト,乾性油等を用いて作る。

 なお,varnishの語源は明らかでないが,一説によれば,古代ギリシアの戦士たちがプトレマイオス3世への贈物としたコハクが妃のベレニケBerenikēの髪の色と似ていることから妃の名で呼ばれるようになり,以後ラテン語のvernix,イタリア語のverniceを経て英語のvarnishとなったといわれ,それとともに樹脂そのものよりも樹脂と油の流動する混合物を指すようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワニス」の意味・わかりやすい解説

ワニス
わにす
varnish

塗料の一種。固形の天然樹脂や合成樹脂(プラスチック)を有機溶媒に溶かして塗布すると、溶剤の揮発または含有成分の空気酸化によって乾燥し、顔料を加えないので滑らかな光沢のある透明な薄膜が形成される。略してニスともよばれる。大別すると、エタノールエチルアルコール)に天然樹脂を溶かした酒精ワニスや固形樹脂を乾性油または半乾性油に溶融して溶かし合わせ、さらに炭化水素系の溶剤に溶かした油(あぶら)ワニス、また炭化水素系の溶剤に樹脂を溶かしたスピリットワニス、天然ワニス、漆(うるし)などがある。

[垣内 弘]

『児玉正雄ほか著『塗料と塗装』増補版(1994・パワー社)』

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百科事典マイペディア 「ワニス」の意味・わかりやすい解説

ワニス

ニスとも。塗料の一種。油ワニス,揮発性ワニスなどの総称。油ワニスは樹脂を乾性油と加熱溶融しドライヤー(乾燥剤)を加えてテレビン油,ミネラルスピリットなどの溶剤に溶かしたもの。揮発性ワニス(スピリットワニスとも)は樹脂を揮発性溶剤に溶かしたもので,溶剤にアルコールを用いたものは特に酒精ワニス(アルコールワニスとも)という。樹脂としてはセラック,コーパル,ダンマルなどの天然樹脂,フェノール樹脂,アルキド樹脂などの合成樹脂が用いられる。セラックを用いた酒精ワニスは最も一般的なものでセラックニス(ラックニス)と呼ばれる。ワニスは一般に淡黄〜暗褐色,透明または濁った液体で,用途により粘度が異なる。乾燥が速く,酒精ワニスは10〜20分,揮発性ワニスは20〜60分,油ワニスは1〜12時間で硬化乾燥する。塗膜は光沢に富み,硬度が高く,耐水性,耐酸・アルカリ性,電気絶縁性がすぐれ,家具,建築物,車両,船舶などの塗装に広く用いられる。
→関連項目エナメルペイント合成樹脂塗料コーパルシックハウス症候群ダマール展色剤塗料

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化学辞典 第2版 「ワニス」の解説

ワニス
ワニス
varnish

一般には,透明な液体で,物体の表面に塗布すると溶剤の揮発または含有成分の酸化によって乾燥して,なめらかな光沢のある透明な薄膜を形成する塗料をいう.大別すると,油ワニス,スピリットワニス,天然ワニス(うるし)とがある.原料は,樹脂類,脂肪油,揮発性溶剤および希釈剤である.油ワニスは乾性油またはボイル油に樹脂を溶かし,おもにテレビン油で薄めたもので,スピリットワニスは樹脂を揮発性の溶剤に溶かしたものである.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワニス」の意味・わかりやすい解説

ワニス
varnish

天然樹脂もしくは人造樹脂を油性溶剤ないし揮発性溶剤に溶解させた塗料。乾燥すると硬く透明で,耐候性と絶縁性にすぐれた塗膜になるため,油彩画やバイオリン,床,帆柱,木工家具の仕上げなどに用いられるほか,針金の被覆,紙やすりの結合剤などにも使用される。

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世界大百科事典(旧版)内のワニスの言及

【塗料】より

…鉛丹も朱もヨーロッパでの応用は東洋より遅れていた。16世紀以降は,ワニス類が家屋や家具の塗装に使われるようになったものの,17世紀に至るまで,東洋の漆芸のような高級木工塗装はヨーロッパにはなかった。16世紀末に,インドからシェラックが導入され,これがフランス式木工塗装を生むもとになった。…

※「ワニス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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