キムジャン文化(読み)キムジャンぶんか

百科事典マイペディア 「キムジャン文化」の意味・わかりやすい解説

キムジャン文化【キムジャンぶんか】

晩秋から初冬にかけての季節に韓国(大韓民国)で一斉に行われるキムチづくりの習慣と行事。2013年,その全体がキムジャン文化として,ユネスコ世界無形文化遺産に登録された。韓国のみならず朝鮮半島全体で受け継がれてきた習慣である。キムジャンは長く厳しい冬を耐えなければならない韓国人にとっては必ず必要な越冬の準備である。晩秋,キムジャンの季節になると,家族や親族のとくに女性を中心に集まってキムチづくりをする。儒教の伝統の強い韓国では女性の飲酒娯楽は制限されていたが,キムジャンのときには許されたため女性たちの祭ともなった。キムジャンは共同体全体で食を分かち合い,成員の協力関係を促進し,共同体文化の伝承など,様々な役割を果たし,地域差や社会的経済的格差,古くは身分差を越えて社会を統合させてきたという点に特長がある。キムジャンの具体的な方法や材料は数代にわたって伝承され,とくに姑から嫁へと受け継がれた。キムジャンは季節別に準備すべきことがあり,すべて完成するまで1年がかかるといわれる。春は各家庭がエビ雑魚など,様々な海産物塩辛を作っておく。夏は天日塩を備えておき,晩夏にはトウガラシを乾燥させ,粉にしておく。晩秋と初冬のキムジャンの季節になると,地域共同体は集まって当該地域のすべての世帯が長い厳冬の間食べるキムチを十分確保できるようにするのである。キムジャンは地域や世代を超え,広範囲に伝承されるものであり,隣人との情愛の分かち合いを実践し,結束を固め,民族文化のアイデンティティと共同体への帰属感を持たせる特色ある食文化となっており,無形の文化を可視化するすぐれた例として評価された。
→関連項目無形文化遺産保護条約

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