パリにあるフランス随一の東洋美術館。リヨンの実業家エミール・ギメÉmile Guimet(1836―1918)が世界一周調査で得た資料をもとに、1879年リヨン市に宗教史の美術館を設立したのに始まる。ギメは世界一周の途上、1876年(明治9)には日本にも立ち寄り、多くの宗教美術を収集した。のちにコレクションは国家に譲られ、これをもとに、図書館を備えた宗教史の研究・啓蒙(けいもう)機関として、1889年パリに現在の美術館が開設された。1945年に正式に国立ギメ美術館となると、ルーブル美術館に所蔵されていたすべての東洋美術品が移管され、一方、ギメからは東洋美術以外の作品がルーブルに移された。ペリオ調査団が敦煌(とんこう)から持ち帰った数千点の資料、インド彫刻『踊るシバ神』(11世紀)、グランディディエ寄贈の中国陶磁器、イタリア人宣教師で中国で活躍したカスティリオーネ(郎世寧(ろうせいねい))による『哈薩克賁(カザツクフン)図巻』、新羅(しらぎ)時代の金冠、室町時代の高僧像をはじめ、アジア諸国のさまざまな時代の遺例が集められている。1991年には別棟に仏教パンテオン・ギャラリーが新設され、ギメが日本で収集したコレクションやルーブルから移された仏教美術がおもに展示されている。96年から始まった改修工事も2001年に終了し、より充実した美術館としてリニューアルオープンした。
[湊 典子・吉川節子]
『アルベール・ボヌール編・解説、佐藤雅彦監訳『東洋陶磁大観8 ギメ美術館』(1975・講談社)』▽『楢崎宗重編著・監修『秘蔵浮世絵大観6、7 ギメ美術館1、2』(1989、1990・講談社)』▽『平山郁夫編著、小林忠監修『秘蔵日本美術大観6 ギメ美術館』(1994・講談社)』▽『ジャック・ジエス編『西域美術1、2 ギメ美術館ペリオ・コレクション1、2』(1994、1995・講談社)』
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