ギルド社会主義(読み)ギルドシャカイシュギ(英語表記)Guild Socialism 英語

デジタル大辞泉 「ギルド社会主義」の意味・読み・例文・類語

ギルド‐しゃかいしゅぎ〔‐シヤクワイシユギ〕【ギルド社会主義】

20世紀初め、英国に起こった政治・社会運動。当時の国家や資本主義に反対し、中世ギルドを模して労働組合を基盤につくられた産業の民主主義連合によって、自治的社会主義を目ざす運動。ギルドソーシャリズム

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精選版 日本国語大辞典 「ギルド社会主義」の意味・読み・例文・類語

ギルド‐しゃかいしゅぎ‥シャクヮイシュギ【ギルド社会主義】

  1. 〘 名詞 〙 一九〇〇年代のはじめにイギリスで起こった社会主義の思想および運動。中世のギルド組織を模倣し、職能的連合を主体として社会改革をはかろうとするもの。ギルド‐ソーシャリズム。〔モダン辞典(1930)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギルド社会主義」の意味・わかりやすい解説

ギルド社会主義
ぎるどしゃかいしゅぎ
Guild Socialism 英語
Gildensozialismus ドイツ語

1913年から25年の間にイギリスで展開された社会主義思想の一つ。この思想の形成には、中世の牧歌的社会を理想として工業文明や資本主義を批判するJ・ラスキンとW・モリスの社会的ロマン主義や、教会や労働組合を国家と同格の法人格として認めることを要求するJ・N・フィッギスの国家主権否認論や、フランスのサンジカリズム、そしてマルクス主義の影響がみられる。1906年成立した労働党の議会活動が期待したほどの成果をあげず、そのうえに、同党の母体をなす労働組合会議が第一次世界大戦前後にかけてストライキを自制するなど一般組合員や下部単産組合の要求を抑える動きをしたのに反発した一部単産組合やショップ・スチュワード(非公認職場委員)の間にギルド社会主義を支持するものが現れて、それは一時期大きな影響力をもつに至った。

 その理論的代表者はG・D・H・コールである。それは、フェビアニズムを批判し、階級闘争を所与の事実として認め、賃金制度の廃止、労働組合の構造の職能別組織から産業別組織への再編成、産業別組合によって生産機能を失った資本家から産業支配権を取り戻すことを要求した。そしてさらに、自治権をもつ職能別に組織された団体(ギルド)、すなわち労働組合、消費組合、教会などの多元的機能集団を基礎に再編成されたナショナル・コミューンによる、現存階級国家克服を主張した。その際、サンジカリズムと異なる点は、生産者ギルドとしての労働組合のみならず、他のギルドも社会の基本的構成要素として承認し、国家、すなわちナショナル・コミューンにも各ギルド間の調整、秩序の維持、財政通貨政策、防衛、外交などの機能を認めている点である。このギルド社会主義は第一次世界大戦後の安定期にその意義を失ったが、生産者たる労働者の産業自治の思想は、ドイツの共同決定法やフランス社会党の労働者自主管理論などに影響を与えている。

[安 世舟]

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改訂新版 世界大百科事典 「ギルド社会主義」の意味・わかりやすい解説

ギルド社会主義 (ギルドしゃかいしゅぎ)
Guild Socialism

ラスキン,モリスの資本主義批判を継承し,フェビアン協会の画一的集産主義と社会立法の下での官僚国家の危険とに反発したイギリスの社会思想,運動。理想主義的傾向が強く,1900年代初頭の知識層の間で支持を得た。労働の質と良心的生産者の保護を説くA.J.ペンティの《ギルドの復興》(1906)に触発され,A.R.オレージ編集《新時代》紙上のS.G.ホブソンの賃金制批判の論文(1912)が引金となり,G.D.H.コールやW.メラーら知識人が中心となって1915年全国ギルド連盟が発足する。コールは《労働世界》(1913)や《ギルド社会主義再論》(1920)などの著書で労働組合による産業の〈管理権の蚕食〉,組合と国家の協力による新社会創造,生産者ギルドと消費者利益を代表する議会その他の機関とからなる多元的国家を提唱。全国建築ギルド(1920-23)などの活動もあったが,産業における直接民主制の理想は実現することなく終わった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギルド社会主義」の意味・わかりやすい解説

ギルド社会主義
ギルドしゃかいしゅぎ
guild-socialism

サンディカリズムの直接的影響のもとに生じたイギリスの社会主義思想。中世への復帰を主張した W.モリスの影響をも受けていたといえ,代表的理論家として G.D.H.コールがあげられる。内容は論者によって異なるが,一致する点は以下のとおり。労働組合を産業別に再編成して階級闘争を行い,ゼネストによって有産階級の権力を奪取する。次いで産業別ギルドを地域単位および全国的規模で結成し,各産業の全国ギルドが生産調整や製品販売にあたる。また全国産業ギルド会議を設けて,ギルド間の紛争を裁定させる。労働者の生活と権利を守ろうとする思想ではあったが,国家とギルドとの関係の不明確さなどから有力な変革の理論にはなりえず,第1次世界大戦前後の短期間だけ注目を受けたにすぎなかった。

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百科事典マイペディア 「ギルド社会主義」の意味・わかりやすい解説

ギルド社会主義【ギルドしゃかいしゅぎ】

サンディカリズムの影響をうけて1910年ころから1920年代初めにかけて英国で提唱された社会主義思想の一つ。ギルドを基礎に労働者階級の直接的産業支配を拡大し,ゼネストによる権力奪取を唱えた。フェビアン主義の議会重視・中央集権的産業国有化政策と対立。建築業を中心に浸透した。主唱者はS.G.ホブソン,G.D.H.コールら。
→関連項目アナルコ・サンディカリスム職能代表制

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ギルド社会主義」の解説

ギルド社会主義(ギルドしゃかいしゅぎ)
guild socialism

第一次世界大戦の前後にイギリスでコール(G.D.H)らによって提唱された社会主義理論。労働者の自治組織たるギルドが各産業を管理し,それらの全国組織に国家機能を委ねようとした。一時支持者を集めたが,以後急速に凋落した。

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