選挙人を各職域に分け、職域を単位として代表者を選任する方法であり、一定の地域を基礎単位として代表者を選出する地域代表制に対比される概念である。
職能代表制は、第一次世界大戦後のイギリスのギルド社会主義、フランスやイタリアのサンジカリズムなどにおいて唱えられ、シドニー・ウェッブ、G・D・H・コール、デュギーらがその意義を強調した代表的理論家である。これらの論者は、各種の利害関係を異にする人々が雑居する地域を単位とする地域代表に基づく議会政治は擬制であると批判し、真の代表は一般的、総括的ではなく、つねに特定的、職能的であると主張するとともに、現代政治における集団の個人に対する優越的意義を説いて、地域代表にかわる職能代表、集団代表の必要性を強調した。このような見解は20世紀になって、各種の職能団体が増大し、これらの組織に加入する者が増加するに伴い、人々は地域よりも同一職能における利害の共通性を強く意識するに至り、これらの社会組織または経済組織の代表者をして政治に関与させようとする見地から主張された。
職能代表制が立法議会の選挙制度において採用された例は少なく、その採用例の多くは諮問機関においてである。たとえば、ワイマール憲法のライヒ経済会議やフランス第五共和政の経済社会評議会などである。
[三橋良士明]
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