国家の権力や機構が、国民全体の利益よりも一部の特定階級の利益を優先し擁護するために仕組まれ、機能する国家。国家の起源を征服に求め、征服者が被征服者に対して軍事力や法を介して支配を行い、彼らを経済的に搾取するための機関だとしたグンプロビッチやオッペンハイマーらの見解もあるが、とくに徹底した階級国家観を打ち出したのはマルクス・レーニン主義の見解である。エンゲルスによると、国家は階級間の対立や闘争の真っただ中から生じた、敵対階級の抵抗を抑圧するための機関であり、一部の支配階級が自らの利益(特権や搾取)を確保し実現するための権力機構にほかならない、という。
このように歴史上の国家はつねに「階級対立の非宥和(ゆうわ)性の産物」(レーニン)であり、経済的に支配する階級がその利益を擁護するために政治的に武装し(つまり、物理的暴力装置である軍隊、警察、裁判所などを支配下に置き、政治権力を独占して)、支配と領有、搾取と抑圧を行う階級国家である、とされる。古代国家は奴隷所有者が奴隷を支配し搾取する奴隷制国家であり、中世の封建国家は土地所有者である領主が隷属農民を搾取する農奴制国家であり、近代の代議制国家は生産手段を所有する資本家(ブルジョアジー)が無所有の賃労働者(プロレタリアート)を搾取する資本主義国家である、ということになる。この見地では、生産手段の私的所有を廃絶して社会主義社会を実現すれば、階級支配はなくなり、階級的性格をもった国家は死滅するものとされているが、ソ連の例が示すように、プロレタリアート独裁下の社会主義国家が、階級性を完全に克服しえないことが明らかとなっており、その検証は今後の課題であろう。
なお、階級国家観に対して、国家は国民全体のためにその機能を遂行する公正な公証人であって、相争う党派や階級を超えてその上に君臨し、公共の福祉という立場から社会内部の諸矛盾を調整し解消すると主張する見解(18世紀の功利主義的夜警国家論、19世紀のロマン主義的国家有機体説、20世紀の福祉国家論など)がある。
[濱嶋 朗]
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