日本大百科全書(ニッポニカ) 「クオータ制」の意味・わかりやすい解説
クオータ制
くおーたせい
quota system
人種や性別、宗教などを基準に、一定の比率で人数を割り当てる制度。政治における男女共同参画を実現するための代表的な仕組みの一つで、議員の一定割合を女性に優先的に割り当てる制度として、ヨーロッパをはじめ、アジアやアフリカなどの開発途上国でも積極的に導入されている。クオータquotaとは、ラテン語に由来する英語で「割り当て、分担、取り分」などの意味である。貿易の場合、特定品目の輸入数量を割り当てる制度に対しても用いられている。
議員の一定数を女性に割り当てるクオータ制には、おもに三つの種類がある。(1)憲法によって、強制的クオータ制や男女同数のパリテ制を制定する方法で、フランス、インド、ウガンダなどで採用。(2)国会議員と地方議員を対象に、法律によって議席、または候補者の比率を割り当てる方法。議席の割当てを行っている国はバングラデシュ、パキスタン、タンザニアなど。候補者の割合を定めている国はベルギー、韓国、アルゼンチンなど。(3)政党がそれぞれの内規において自発的にクオータ制を定める方法。この方法は多くの国が採用しており、代表的な国にはドイツや北欧諸国、南アフリカ共和国などがある。
2012年(平成24)11月、女性の地位向上を目ざす組織・国連ウィメン(UN Women)の事務局長バチェレMichelle Bachelet(1951― 。2006~2011年チリ大統領)は、日本の国会議員に占める女性の割合が世界の平均値を大きく下回る現状にあることを指摘し、日本にクオータ制などの制度改革を呼びかけた。2011年12月の日本の国会議員に占める女性の割合は、衆議院で10.9%(52名)、参議院で18.6%(15名)と、世界全体平均約20%を大きく下回った。2017年10月の総選挙では、衆議院の女性当選者は10.1%(47名)と過去2番目に高い割合となった(当選者数割合の最高は2009年の11.3%)。しかし、2018年の各国の社会進出における男女格差指数(ジェンダーギャップ指数)によれば、日本は149か国中110位で、OECD諸国中では最下位となっている。
国際労働機関(ILO)が2019年に発表した「ジェンダー平等動向レポート」ではG7諸国の大手上場企業の女性取締役比率を比較している。それによると、2016年の女性取締役比率は、フランス37.0%、イタリア30.0%、ドイツとイギリスが27.0%、カナダ19.4%、アメリカ16.4%であるのに対し、日本は3.4%と極端に低い。さらに2010年と2016年を比較してもわずか2.5%の伸びであった(2010年は0.9%)。
[編集部 2019年12月13日]