インドネシアのジャワ島とスマトラ島を分かつスンダ海峡内の火山島。クラカトア島ともいう。安山岩、玄武岩からなる。紀元前416年の大規模な噴火による陥没でできたカルデラの壁が3島として残り、その一つのラカタ島と、カルデラ内に新たに生じた2火山が合体して、長径8キロメートル、短径5キロメートルのクラカタウ島を形成した。1680~81年に小さい爆発があったが(有史以後最初)、以後約2世紀は平穏であった。1883年の噴火は5月20日に開始し、8月26日午後激化、翌27日最高潮に達し、28日まで続いた。近世の世界火山活動史上でも最大級の大爆発である。この噴火で島の約3分の2が飛散し、中央部が陥没して、新たなカルデラができた。もとのラカタ島にあたる部分だけが残存する。その爆発音は遠くイスタンブール(トルコ)や南アフリカでも聞こえたといわれ、また高さ20メートルの津波がジャワ島西部を襲い、死者約3万6000人を出した。爆発の総エネルギー1025エルグ程度、噴出物(おもに石英安山岩質)は総量約18立方キロメートルで、30キロメートル以上の高空に噴出された火山灰のため、数か月間は世界各地で日の出・日没時に太陽が異常に見え、数年間世界全般の気温が下がった。火山爆発指数は6である。1927年のカルデラ内での海底噴火で、玄武岩質の噴石丘の新島アナク・クラカタウ(クラカタウの子の意)を生じた。以後、しばしば噴火を繰り返している。1935年から噴出物は安山岩質に変化した。アナク・クラカタウ島は標高150メートル余、ラカタ島は813メートル。
[諏訪 彰・中田節也]
『荒牧重雄・白尾元理・長岡正利編『空からみる世界の火山』(1995・丸善)』
クラカトアKrakatoaとも呼び,インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡にある火山島。1883年の大噴火によって,カルデラの中央部にあった三つの火口丘から成る火山島の中央部が消滅した。この噴火の規模は歴史時代の世界中の火山噴火の中で屈指のものであった。噴煙は70~80kmの高空に達し,全地球をおおい,このため,その後5年間日没時に太陽が異常に赤く見えたり,ビショップ環が観察された。山体の崩壊によって生じた津波は対岸で20mの高さにも達し,そのため,3万6000人の人命が失われた。当時の気圧計の記録によれば,爆発によって生じた気圧波が地球を7回りもしたという。噴出した物質の総量は少なくとも18km3と見積もられているが,このうち,古い山体を形成していた物質は5%程度と推定され,消滅した膨大な量の山体の行方が議論されている。
執筆者:下鶴 大輔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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