ロシアの作家,寓話詩人。幼くして父を失い,役所の給仕や下級官吏を転々としながらフランス語とイタリア語を独習し,文学に親しむようになった。首都ペテルブルグで友人たちと風刺雑誌を刊行するとともに,喜劇や悲劇にも筆を染めるが,30代半ばで寓話詩を書きはじめ,一躍名声を博した。1809年1冊にまとめられて出版された寓話詩集は7万部を超す空前の売行きを示した。イソップやラ・フォンテーヌなどの作品を含め,クルイロフの筆によってロシア人のいわば国民的財産になった寓話詩は200編あまりを数える。これらの作品は,いずれも動物の形象を通じて当時のロシアの社会の偽善や悪徳を痛烈に皮肉っており,翻訳の場合ですら,きわめてロシア的な雰囲気にみちている。彼の詩にちりばめられている数々の名文句は,今でも諺や成句として日常のロシア語のなかでひろく用いられている。
執筆者:中村 喜和
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…ユダヤ人のカニグズバーグE.L.Konigsburg,I.B.シンガー,黒人のハミルトンH.Hamiltonがすぐれ,ほかにフォックスP.Fox,ボイチェホフスカM.Wojciechowskaらが問題作を書いている。
[旧ソ連邦]
かつてロシアでは,A.S.プーシキンが民話に取材して《金のニワトリ》(1834)などを書き,エルショフP.P.Ershovが《せむしの小馬》(1834)を作り,I.A.クルイロフはイソップ風の寓話を,V.M.ガルシンは童話的な寓話を書いたが,いずれも権力に刃向かう声であった。F.K.ソログープは暗い影の多い不思議な小説を作り,L.N.トルストイはおおらかな民話と小品を発表した。…
※「クルイロフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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