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クレチアン・ド・トロア クレチアン・ド・トロアChrétien de Troyes

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

クレチアン・ド・トロア
Chrétien de Troyes

[生]1135頃
[没]1190頃
フランスの叙事詩人。騎士道物語に新境地を開いた。作品から知る以外その生涯は不明だが,聖職者の教育を受けたらしい。マリー・ド・シャンパーニュらの庇護を受け,1158年頃からオウィディウスの作品の翻案などで創作を始めた。その後ブルターニュ物語,特にアルチュール (アーサー) 王と円卓の騎士の物語に題材をかりた一連の作品,『エレックとエニード』 Érec et Énide (1170頃) ,『クリジェス』 Cligès (76頃) ,『イバン,または獅子の騎士』 Yvain ou Le Chevalier au Lion (77~81) ,『ランスロ,または荷馬車の騎士』 Lancelot ou Le Chevalier à la charrette (79~81) ,神の秘跡の象徴「聖杯」をめぐる『ペルスバル,または聖杯物語』 Perceval ou Le Conte du Graal (81頃) を書いた。背景は驚異と超自然に満ちた伝説の世界で,幻想と現実が入り交り,愛と冒険が描かれ,特に『ランスロ』には女性崇拝と奉仕の宮廷風恋愛の理想が盛られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クレチアン・ド・トロア
くれちあんどとろあ
Chrtien de Troyes
(1135ころ―85ころ)

フランス中世最大の韻文物語作家。初めは『愛の技術』などオウィディウスのラテン語作品の翻訳や、マルク王とイズーの物語を書いたと自作のなかで述べているが伝存しない。1165年ころ長編『エレクとエニード』を書き、フランスにおけるアーサー王物語群の事実上の創始者となった。これは、妻への愛におぼれて騎士の道を踏み迷った主人公が冒険のすえに自己を回復する夫婦愛の物語。次作『クリジェス』(1176ころ)は、夫の甥(おい)を愛した王妃が真実の愛を貫いて幸福な結末に至る物語。いずれも、南仏叙情詩人(トルーバドゥール)たちが称揚した精美の愛(フィナモール)が不倫の恋の追求であったのと好対照をなす。70年代後半に『ランスロあるいは荷車の騎士』(末尾部は別の詩人の筆)、『イバンあるいは獅子(しし)の騎士』を書いたのち、80年代にフランドル伯フィリップから与えられた種本をもとに『ペルスバルあるいは聖杯の物語』に着手。これは、素朴で粗野な若い騎士が不思議な城で神秘的試練に遭遇する物語。敬虔(けいけん)な宗教性に特色があり、新境地を思わせる作品だが、9000行を費やしながら未完に終わっている。[天沢退二郎]

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