クロベ(読み)くろべ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロベ」の意味・わかりやすい解説

クロベ
くろべ / 黒檜
[学] Thuja standishii (Gord.) Carr.

ヒノキ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の常緑針葉高木。別名ネズコ。大きいものは高さ35メートル、直径1.8メートルに達する。樹皮赤褐色、薄く滑らかで光沢があり、大小不同の薄片となってはげ落ちる。葉は交互に対生し、鱗片(りんぺん)状で、表面は深緑色で、ヒノキより大形であるがアスナロより小形である。5月ころ小枝の先に花をつける。雌雄同株雄花楕円(だえん)形で鱗片内に四つの葯(やく)がある。雌花は短く、鱗片内に3個の胚珠(はいしゅ)がある。球果は楕円形で長さ0.8~1センチメートル、その年の10月ころ黄褐色に熟す。種子は線状披針(ひしん)形、褐色両側に小翼がある。本州四国深山に自生する。陰樹で成長はやや遅い。木は庭園、公園に植え、材は建築、器具下駄(げた)、経木(きょうぎ)などに用いる。

[林 弥栄 2018年6月19日]

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百科事典マイペディア 「クロベ」の意味・わかりやすい解説

クロベ

ネズコとも。ヒノキ科の常緑高木。本州,四国に分布するが,中部地方以北に多く,山地にはえる。樹皮は赤褐色,なめらかで薄くはげる。葉は交互に対生し,鱗片状で,ヒノキの葉より大きくアスナロの葉より小さい。雌雄同株。5月,藍(あい)色の花を開き,果実は卵円形で,10月に黄褐色に熟する。材は建材,器具,樹は庭木とする。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロベ」の意味・わかりやすい解説

クロベ
Thuja standishii

ヒノキ科の常緑高木で,ネズコまたはクロビともいう。日本の特産種で本州中部以北の山中に生える。特に富山県の黒部谷はこの木が多いので地名のもとになったといわれる。樹高 10~20m,幹の直径は 30~40cmであるがまれに 1mに達することもある。樹皮は赤褐色で大小不同の薄片に裂ける。葉は鱗片葉で十字対生につき,ヒノキに似ているが粗大で光沢がある。花は雌雄同株で,球果は6~8片ある種鱗のうち2対のものに細い楕円形の種子ができる。材は建築材や器具材として用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「クロベ」の意味・わかりやすい解説

クロベ

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世界大百科事典(旧版)内のクロベの言及

【アスナロ(翌檜)】より

…材は建築,土木,家具,船,車両,桶などに用いられ,樹皮は槙肌(まきはだ)として優れている。木曾ではヒノキ,サワラ,ネズ(ネズコ,クロベともいう),コウヤマキとともに五木の一つに数えられる。 アスナロ属はアスナロただ1種のみからなる日本特産属である。…

※「クロベ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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