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クローン牛(読み)クローンうし

百科事典マイペディアの解説

クローン牛【クローンうし】

親とまったく同じ遺伝情報を持った牛。1997年2月米国のABSグローバル社が初めて開発に成功した。これは,あらかじめ核を取り出しておいた未受精卵に,成長した牛の体細胞から取り出した核を移植する方法で行われたもの。体細胞を提供した牛と生まれた子牛は完全に同一の遺伝子を持つ(体細胞クローン)。哺乳動物クローンが作られたのは,1996年7月に英国で誕生したクローン羊に次いで2種目。日本では1998年7月,石川県畜産総合センターが成牛の卵管上皮細胞や卵丘(らんきゅう)細胞を使った体細胞クローンによるクローン牛の開発に世界で初めて成功した。この技術が確立すれば生産能力の高い牛を大量に生産できるようになり,さらに個体差がなくなるため高品質の畜産物の安定供給も可能になる。希少動物の増殖や絶滅した動物の復活などへの応用も不可能ではない。その一方で,人間にも応用しうる技術であるため倫理的な問題が大きく,各国で議論が高まっている。1999年現在,農林水産省は日本で生育しているクローン牛は35頭と報告。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

クローン牛
くろーんうし

親と同じ遺伝情報をもつウシで、1996年にイギリスで作出されたクローン羊「ドリー」と同じように成体(大人)の体細胞から生まれたものと、従来の受精卵分割・核移植によるものとがある。技術的には受精卵クローン牛のほうが古く、1987年アメリカで初めて誕生し、日本では90年(平成2)に誕生した。その後、実用化技術として一部のウシの生産に活用されている。日本でも食肉用としては1993年から、牛乳用としては95年から出荷されている。一方、成体の体細胞からクローンを作出する(体細胞クローン)技術の開発は、1990年代に活発化した。日本では優良家畜の生産にクローン技術を利用するためのプロジェクトが、国や地方自治体の研究機関、民間企業で活発に進められた。その結果1998年7月、近畿大学と石川県で、成体のウシの体細胞を使ったものとしては世界初のクローン牛が誕生した。その後、各地で体細胞クローン牛がつぎつぎに誕生しているが、さらに死産などの発生率や誕生後に死亡する子牛数の低減などの技術的課題に関する研究も続いている。この体細胞クローン技術による家畜の作出技術の開発には、欧米諸国も積極的であり、ウシ以外の哺乳(ほにゅう)動物へも応用されている。クローン牛では、すでに肉質など品質のよいウシの安定生産が可能である。さらにウシ以外では、クローンのブタやヤギも誕生している。2008年現在の課題は、クローン牛やブタの食用としての利用について、「食の安全性」の側面からの検討である。2008年1月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「クローン牛やブタは、従来から流通しているウシやブタと同様に食用として安全である」という判断を下した。2008年4月1日、日本の厚生労働省は、「クローン牛やブタの食用としての安全性について」、食品安全委員会に健康影響について評価するように諮問した。[飯野和美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のクローン牛の言及

【クローン】より

…この技術を用いたものが遺伝子工学で,基礎的研究,応用面にひじょうな効力を発揮するものと思われる。遺伝子工学【岡田 節人】
[クローン羊とクローン牛]
1996年にイギリスのイアン・ウィルムットらは〈ドリー〉と名付けられたクローン羊をつくりだすことに成功した(論文発表は97年2月)。これはメス羊の未受精卵の核を除去し,別のメスの乳腺細胞の核を移植することによって生まれたもので,ドリーはメス羊とまったく同じ遺伝子をもつところから,クローン人間の可能性とそれがはらむ倫理的問題をめぐって大きな議論を呼んだ。…

※「クローン牛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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