改訂新版 世界大百科事典 「クワンツ」の意味・わかりやすい解説
クワンツ
Johann Joachim Quantz
生没年:1697-1773
ドイツのフルート奏者,作曲家。20代にローマ,ナポリ,パリ,ロンドン等で伝統的な演奏と作曲の技法を学ぶとともに,A.スカルラッティ,J.A.ハッセ,ヘンデルの知遇を得て新しい音楽様式への理解を深めた。その後プロイセンのフリードリヒ大王の即位(1741)と同時に王の側近の楽員のひとりとなり,終生その職務に従事した。彼が円熟期に執筆した《フルート奏法試論Versuch einer Anweisung,die Flöte traversiere zu spielen》(1752)は,フルートの教則本であるにとどまらず,バロック期から古典派の時代へと移行する18世紀中葉の音楽様式と音楽観を今日に伝える貴重な史料である。
執筆者:後藤 暢子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報