フックス(読み)ふっくす(英語表記)Immanuel Lazarus Fuchs

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フックス」の意味・わかりやすい解説

フックス
Fuchs, Ernst

[生]1903.6.11. ハイルブロン
[没]1980/1981
ドイツの神学者。テュービンゲン大学マールブルク大学で学び,1932年ボン大学の新約聖書学講師となる。翌年政治的理由で大学の教員資格を取消される。マールバハのウィンツァーハウゼン教会の牧師となる (1934) が,ゲシュタポに追われた。テュービンゲン大学新約聖書学講師 (49) ,同大学教授 (53) ,ベルリン神学大学教授 (55) ,マールブルク大学教授 (61) 。 R.K.ブルトマンの影響を受け,G.エーベリンクとともに解釈学的神学を提唱した。主著"Die Freiheit d. Glaubens" (49) ,"Hermeneutik" (54) ,"Zur Frage nach dem historischen Jesus" (65) ,"Glaube und Erfahrung. Zum Christolog. Problem im NT." (69) ,"Marburger Hermeneutik" (68) ,"Jesus,Wort und Tat" (71) 。

フックス
Fuchs, Klaus Emil Julius

[生]1911.12.29. リュッセルズハイム
[没]1988.1.28. ライプチヒ
東ドイツの原子物理学者。ライプチヒ,キール両大学で物理学,数学を学ぶ。キール大学在学中にドイツ共産党に入党 (1932) 。 1933年ナチス政権成立に伴いイギリスに渡り,グラスゴー,バーミンガム両大学で原爆研究に従事した。 42年イギリスの市民権を獲得,イギリス共産党に入党。 43年 12月~46年6月イギリス科学者団の一員として渡米し,「マンハッタン計画」に参画。第2次世界大戦終了後イギリスで原子物理学の研究にたずさわっていたが,50年2月ソ連に原爆の秘密を漏した容疑のためロンドンで逮捕され,禁錮刑で服役。 59年6月釈放されて東ドイツに行き,市民権を得た。同年9月東ドイツ核物理学研究所理論物理学部長,原子力中央研究所副所長などをつとめ,ソ連で研究に従事した。

フックス
Fuchs, Ernst

[生]1930.2.13. ウィーン
オーストリアの画家ウィーン幻想派などと呼ばれる動向の代表的画家。ウィーン美術学校で学ぶ。少年時代から描写力にすぐれ,美術学校に在学中から作品を発表しはじめる。古代神話や旧約聖書から題材を選び,細密描写によって神秘的なイメージを描く。 A.レームデン,E.ブラウアー,R.ハウズナーなども同じ傾向に属するが,フックスの作品はなかでも神秘性と官能性が著しい。 1959年,フンデルトワッサーらとともに『ピントラリウム宣言』を刊行した。

フックス
Fux, Johann Joseph

[生]1660. ヒルテンフェルト
[没]1741.2.13. ウィーン
オーストリアの作曲家,音楽理論家。 1698年ウィーンの宮廷作曲家,1705年ウィーン大聖堂の第2楽長,12~15年同教会楽長,13年宮廷の副楽長,15年正楽長。多く教会音楽,10曲のオラトリオ,19のオペラ,鍵盤楽曲などの器楽曲を残した。著書『古典対位法』 Gradus ad Parnassum (1725) は長らく対位法教程として用いられた。

フックス
Fuks, Ladislav

[生]1923.9.24. プラハ
[没]1994.8.19. プラハ
チェコの小説家。長編小説『テオドル・ムントシュトック氏』 Pan Theodor Mundstock (1963) ,『墓守』 Spalovač mrtvol (1967) ,短編集『モルモットの死』 Smrt morčete,小説『ナタリエ・ムースハブロバーのねずみ』 Myši Natalie Mooshabrové (1970) などで知られる。特異なテーマと文体で独特の世界を築いている。

フックス
Fuchs, Leonhard

[生]1501.1.17. ウェームディンク
[没]1566.5.10. テュービンゲン
ドイツの博物学者,医者。医学を学び,テュービンゲン大学教授となる。薬草に興味をもち,1542年に『植物誌』 Historia Stirpiumを著わした。これには 500あまりの植物の克明な観察図が美しい木版によって刷られ,形態・産地・採集最適時期などが要領よく付されており,その後の植物図鑑の範型となった。みずからの観察に基づいた正確な図を用いている点で画期的であった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フックス」の意味・わかりやすい解説

フックス
ふっくす
Immanuel Lazarus Fuchs
(1833―1902)

ドイツの数学者。現、ポーランド領のポーゼン州の小村モシンに生まれる。グライフスワルト、ゲッティンゲン、ハイデルベルク、ベルリンの各大学教授を歴任した。複素領域における線形微分方程式の理論で先駆的な業績をあげた。保型関数に関連していわゆるフックス群の概念を導入し、広い研究分野を開拓した。また、幾何学や整数論に関する研究もみられる。

[小松勇作]

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