改訂新版 世界大百科事典 「ケイ酸」の意味・わかりやすい解説
ケイ(珪)酸 (けいさん)
silicic acid
ふつうはオルトケイ酸H4SiO4を指すが,メタケイ酸(H2SiO3)nのほか各種の形式の酸,あるいはxSiO2・yH2Oであらわされる無定形不定組成の水和二酸化ケイ素を含めた総称として用いられることもある。オルトケイ酸は,四ハロゲン化ケイ素を加水分解するか,オルトケイ酸アルカリを塩酸で処理し,生成物をエーテル,ベンゼンなどで洗浄し乾燥すると無色粉末状の化合物として得られるが,純粋にH4SiO4のみを得るのはむずかしく,H2SiO3,H2Si2O5などが混入する。比重1.57。水にわずかに溶け,熱水には可溶。酸には溶けないが熱アルカリにはよく溶ける。フッ化水素と反応してヘキサフルオロケイ酸H2[SiF6]を生ずる。熱するか,無水エチルアルコール,濃硫酸などにより脱水される。メタケイ酸は比重2.1~2.3の無定形物質で,熱すると分解する。コロイド状不定組成のケイ酸はシリカゲルと呼ばれ,水ガラス(主としてケイ酸ナトリウムを含む濃厚水溶液)に塩酸を加えて,透析して製造される。
ケイ酸塩
二酸化ケイ素と金属酸化物とからなる塩。化学式xMI2O・ySiO2。Mは金属で,アルミニウム,鉄(Ⅱ),カルシウム,マグネシウム,ナトリウム,カリウムなどであることが多い。天然には,造岩鉱物として地殻の主成分をなし,広く多量に存在する。一般に融点が高く,融解してから冷やすとガラス状になりやすい。酸や多くの薬品におかされにくい。アルカリと溶融すると水に可溶なアルカリ塩となり,フッ化水素酸と反応して四フッ化ケイ素となる。ケイ酸塩の結晶構造の基本は,ケイ素原子を中心とする正四面体の各頂点に酸素をもったSiO4四面体である。この四面体が孤立した形のもの,いくつかの頂点を共有して二次元にのびた鎖状,環状,層状になったもの,三次元的につながったものとなり,そのすき間に金属イオンが入ってイオン結合している。ガラス,陶磁器,セメントなどの窯業はケイ酸塩の特殊性を利用した工業である。
→ケイ酸塩鉱物
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報