日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケラトサウルス」の意味・わかりやすい解説
ケラトサウルス
けらとさうるす
ceratosaur
[学] Ceratosaurus nasicornis
竜盤目獣脚類(亜目)ケラトサウルス類(下目)ネオケラトサウルス類Neoceratosauriaに属する恐竜。ジュラ紀後期、約1億5570万年~1億4550万年前の北アメリカ西部の地層から産出した二肢歩行の肉食恐竜。全長約6メートルで、属名はギリシア語で「角(つの)の爬虫(はちゅう)類」という意味。板状の隆起が鼻の上にあり、低い1対の角が目の上にもあった。どちらもきゃしゃな骨でできているため、角の役割は武器としてではなく、交尾期や仲間どうしの争いで相手を押す程度に使われ、おもにディスプレー用であったらしい。生きているときは鞘(さや)に包まれていて、角の高さを1.5倍ほどに見せたであろう。化石として残されていた頭骨の内型を見ると、細長い脳は草食恐竜の脳よりはるかに大きく、大脳・嗅覚(きゅうかく)および脳下垂体がよく発達していた。大形獣脚類で、この属ほどきゃしゃな頭骨をもつものはない。頭骨は前方にしだいに細くなり、先端で急に丸くなっているので、上から見るとワニに似る。歯は大きく、かなり薄く鋭い。ケラトサウルスの個体はわずかしかみつかっていないが、同時代に多数いたアロサウルスAllosaurusの歯はずんぐりと小さいので、アロサウルスの獲物より大きい相手を倒せたのかもしれない。下顎(かがく)はほかの頭骨の柔軟なつくりに応じて可動性であったらしい。頸(くび)はまっすぐ伸び、胸郭は丸みを帯びずかなり薄かった。胴から尾にかけての椎骨(ついこつ)の突起が高く、背中が少し盛り上がり、また、ひれのような外観で、鱗甲(りんこう)で保護されていたらしい。手の指は4本あって原始的であった。尾の棘(きょく)突起と血道弓(けつどうきゅう)(椎体から下方へ1対突き出ている突起で、血管を囲む)が長いため尾は縦長で平たく、きわめて強靭(きょうじん)なので、水をかいて泳ぐのに使われたかもしれない。大きな草食の竜脚類と同時代にすんでいたので、成体どうしの戦いで、ケラトサウルスやアロサウルスが竜脚類を倒すのは命がけであったと思われるが、竜脚類の死体を奪い合うのであれば、大きな歯をもつケラトサウルスのほうが有利であろう。この仲間には長さ18センチメートルの歯(ティラノサウルスTyrannosaurusなみ)をもつものがいたらしい。
[小畠郁生]