翻訳|size
印刷用紙、筆記用紙のにじみ止めや包装紙の耐湿性、紙の毛羽立ち防止など、紙質改善に用いる薬品、またその操作のこと。紙の主原料はパルプで、パルプの主成分は親水基を多数もったセルロース繊維であるから、紙には吸水性があり、インキや墨で書くとにじみ、また毛羽立つことがある。それらの性質を適度に調節するためにサイズが行われる。
[御田昭雄 2016年4月18日]
抄紙工程の前に、サイズ剤をパルプに配合しておく方法(内添サイズ)と、抄紙工程後に紙の表面に塗布する方法(外面サイズ)とがある。
内添サイズは完全紙料の調製の際に他の助剤とともに配合できるので、とくにサイズ用の設備を必要としない。このため実施が容易で、しかも紙の吸水性およびにじみ止めの調整ができるので、印刷用紙、筆記用紙、包装紙をはじめ多くの紙の製造に際して一般に行われている。
外面サイズは紙の表面の毛羽立ちを抑えるなど印刷効果の向上を期待できるが、抄紙後に紙の表面にサイズ剤を塗布するため、その設備が必要であり、内添サイズに比べ一般的ではない。
[御田昭雄 2016年4月18日]
洋紙の主原料は木材パルプで、ごく少量の非木材パルプも製紙原料として用いられるが、いずれにしてもパルプの主成分はセルロース繊維で、紙の原料として使用する際、抄紙に先立ちパルプを水で離解(パルプを単繊維状態になるように分散させること)し叩解(こうかい)(パルプを水中でたたいて、各単繊維をもとの繊維体より細い糸状体にすること)する。これにより単繊維のかたまりであるパルプは単繊維化し、さらにパルプの繊維を毛羽立たせ分散させて、単繊維どうしの接着性を向上させ、また繊維長をそろえるなどの前処理効果が得られる。通常叩解後のパルプに、填料(てんりょう)(不透明性を出すため使用する陶土など)および色料(色付けをするため使用する染料または顔料)などを加えて抄紙可能な完全紙料を調製する。
[御田昭雄 2016年4月18日]
これまでロジンサイズがもっとも多く用いられていた。ロジンサイズは、松脂(まつやに)から精製したロジンをアルカリで処理してロジンせっけんのコロイド溶液(乳濁液)をつくり、これと硫酸アルミニウム水溶液をパルプに加えて化学反応をおこさせる。液は硫酸アルミニウムの加水分解で生ずる硫酸によって弱酸性となり、不溶性のロジン酸アルミニウムの微細粒子が生成してセルロース繊維の表面に付着し完全紙料となる。
完全紙料はさらに水で希釈して均一に分散させ、抄紙機にかけ、その網上で薄い膜状に抄(す)き上げる。これが湿紙で、湿紙を絞り、加熱したドライヤー上で乾燥させると、繊維上のロジン酸アルミニウムの微粒子は軟化して膜状に繊維表面に広がり、紙に適度の耐水性とにじみ止めの効果をもたらす。したがってロジンによる酸性サイズを行って得られた紙には微量の酸が残り、水で抽出すると抽出液は酸性を示すので、このような紙を酸性紙という。
ロジンサイズに用いるロジンはパルプと同様林産物で、製紙工業にとっては入手しやすく、サイジングの操作が容易であり、優れたサイズ効果が望めるのでもっとも広く行われた。しかし、酸性紙は耐久性に乏しく、50~100年以上たった貴重な本や公文書の劣化が問題となり、1980年(昭和55)ごろから酸性サイズにかわって中性サイズ剤による中性サイズが多くなった。
中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸などがあり、乳化させて用い、定着剤としてデンプンカチオン性ポリマーなどを用いる。中性サイズの副次的効果として、沈降性炭酸カルシウムを安価な填料として使用できることもあげられる。酸性サイズで上質の紙をつくる場合、填料として白色度の高い上質のチャイナクレイ(陶土)やチタン白など耐酸性の顔料を必要とするが、日本では上質のチャイナクレイは資源的に枯渇し、安価に入手することは容易でなかった。
[御田昭雄 2016年4月18日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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