イスラム教における礼拝をいう。サラートは、被造物、僕(しもべ)としての人間が己を卑しくして、自己が帰依(きえ)する慈悲深い唯一絶対の創造主なる神を賛美する、形式の定まった儀礼であり、私的なドゥアーdu‘ā'(各人が自己の内奥を神に告白し、許しや救いを願う祈り)とは区別される。サラートは、コーランにも多くの言及があり、イスラム教の最初期からもっとも基本的な信仰義務とされたもので、五柱(イスラム教徒の五つの主要義務)の一つである。礼拝の回数、作法、順序などは、ムハンマド(マホメット)のスンナ(範例)に基づき、詳細に規定されている。毎日の礼拝は1日5回(暁、正午、午後、日没後、夜)、場所は家や職場などでもよいが、1人よりは集団で、しかもモスクで行うのが望ましいとされている。礼拝は、浄(きよ)めのあと、メッカに向かって立ち、神をたたえ、コーランの「開扉(かいひ)の章」を朗唱、続いて手を膝(ひざ)につけて深く低頭し、頭をあげるとともに両手を高くあげたあと、二度跪拝(きはい)する。金曜日の正午には、各地のモスクに集まって共同の礼拝(ジャマーアjamā‘a)が行われる。そのほか、祝祭や雨乞(あまご)いなどの特殊な礼拝もある。
[小田淑子]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…コーランで別々に記された言葉を結びつけたカリマが,最初,異教徒のイスラムへの改宗の〈証拠〉として用いられ始めたと考えるのは,きわめて穏当である。 礼拝はアラビア語でサラートṣalātと呼ばれ,神への服従と感謝の念の行為による表明である(図)。義務としての礼拝ṣalāt al‐maktūbaは夜明け(スブフṣubḥ,ファジュルfajr),正午(ズフルẓuhr),午後(アスル‘aṣr),日没(マグリブmaghrib),夜半(イシャー‘ishā’)の一日5回であり,ほかに自発的礼拝ṣalāt al‐taṭawwu‘を行うことが推奨される。…
※「サラート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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