改訂新版 世界大百科事典 「サンディニスタ運動」の意味・わかりやすい解説
サンディニスタ運動 (サンディニスタうんどう)
ニカラグアの革命運動の呼称。正式名称はサンディニスタ民族解放戦線Frente Sandinista de Liberación Nacional(略称FSLN)。1934年に暗殺されたニカラグアの革命家A.C.サンディーノの名前を取ったこの運動は,長期にわたって同国を独裁的に支配してきたソモサ体制に反対して,1961年に都市の急進的な青年を中心に起こった。指導者はカルロス・フォンセカ・アマドール(1976年殺害)であった。FSLNの成立には,1959年のキューバ革命が大きく影響しており,武装闘争を通じてのニカラグアでの社会主義革命の実現が,その基本路線をなしていた。
FSLNの活動は国境地帯や山岳部でのゲリラ戦争を主としており,政府軍との対決は長く一進一退を繰り返した。運動内部でも三つの分派が形成されている。しかし,78年1月に合法的政治活動の指導者であったペドロ・ホアキン・チャモロがソモサの指令で暗殺されたのを契機に,FSLNの支持基盤も社会各層に広がり,ソモサ体制は大きく動揺した。同年末には,戦線内部での3分派の対立も解消されている。
79年に入ると,独裁政権は反政府勢力にほとんど効果的な手を打てなくなり,FSLN側は6月に大規模な軍事攻撃と都市蜂起,ゼネストをもって最終攻勢をかける一方,サンディニスタ(FSLNのメンバー)を中心に臨時政府を樹立した。7月17日にアナスタシオ・ソモサ(ソモサ家)はアメリカに亡命し,19日にFSLNは首都マナグアに入城する。翌20日,サンディニスタやその他の諸勢力の代表者たちによって,民族再建政府の樹立が正式に宣言されている。このニカラグア革命は,FSLNを中心に行われたため,サンディニスタ革命とも呼ばれている。
→ニカラグア
執筆者:山崎 カヲル
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報