アメリカのコンピュータ機器メーカー。高性能ワークステーションの大手メーカーであった。2009年にソフトウェア会社オラクル社Oracle Corp.に買収され、子会社となった。
サン・マイクロシステムズは1982年、創業者スコット・マクネリScott McNealy(1954― )、コンピュータ技術者ビル・ジョイBill Joy(1956― )ら、当時平均年齢26歳という若者4人により設立された。社名のSunとはStanford University Networkの略であり、スタンフォード大学の研究機関が設立の由来となっている。設立後わずか3か月で発表した初代ワークステーションのSun-1は、低価格のコンポーネント(ディスプレー、キーボード、本体のシステム、記憶装置など各部分が希望に応じて買い換え、交換可能な組合せ)とオペレーティングシステム(OS)のUNIX(ユニックス)を基礎にした高性能コンピュータであった。このSun-1の成功によって、サン・マイクロシステムズは創設以来わずか6年にして売上高10億ドルを達成した。1985年にはSun-3シリーズが発表され、同社はワークステーション業界のトップの地位を獲得し、翌年には株式が公開された。
サン・マイクロシステムズの扱うワークステーションは設計用、科学技術用、一般業務用であり、さまざまな企業において統合業務パッケージ、製品データ管理システム、電子商取引などに同社の製品が利用された。また、大容量のネットワークサーバーも販売。UNIXによるオペレーティングシステムが同社のネットワーク・システムの基軸であり、1987年にはUNIXの標準化を目ざしてAT&Tと提携した。同年、演算処理速度の著しい向上をもたらすRISC(リスク)プロセッサーのSPARC(スパーク)(スケーラブル・プロセッサー・アーキテクチャーScalable Processor ARChitecture)を開発して、1989年にそのRISCチップを採用したワークステーションSPARCstation 1を発表。1995年、インターネットおよびイントラネット(企業内ネットワーク)の開発者向けにデザインされた、特定のプラットフォーム(基盤となるハードウェアやソフトウェア)に依存しないオブジェクト指向の汎用(はんよう)プログラム言語Java(ジャバ)を発表。Java言語はインターネットの普及とともに広範な支持を得て、1999年にはJavaに基づき構築された分散処理技術のJini(ジニー)を発表した。Jini技術はプログラムやハードウェアをすべて統一的なオブジェクトとして扱うため、ネットワーク環境での利用に適し、応用範囲の広い画期的なものであった。1998年の売上高は97億9084万ドル、純利益は7億6286万ドル。売上地域別構成はアメリカ合衆国が49%、ヨーロッパが27%、その他が24%を占めた。
その後サン・マイクロシステムズは、市場シェアが低下、売上げ減少に陥り、IBMがサン・マイクロシステムズの買収を提案。しかし買収交渉は決裂し、2009年4月、アメリカのソフトウェア大手のオラクル社により74億ドルで買収され、2010年1月に完全子会社となった。2009年の売上高は114億4900万ドルであった。
日本では1986年(昭和61)に日本サン・マイクロシステムズが設立され、コンピュータおよび関連機器の日本での製造・販売および輸入を行った。1999年(平成11)3月、同社はサン・マイクロシステムズに社名変更し、米国法人の買収に伴い日本オラクルとなった。売上高は約1154億円(1998年6月期)。2007年7月~2008年6月期の売上高は628億8300万円であった。
[萩原伸次郎]
『松下芳生・臼井淳著『機心なきサン・マイクロシステムズの挑戦――戦略的ビジネス・システム構築』(1998・コンピュータ・エージ社)』
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