シギウナギ(読み)しぎうなぎ(その他表記)slender snipe eel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シギウナギ」の意味・わかりやすい解説

シギウナギ
しぎうなぎ / 鴫鰻
slender snipe eel
[学] Nemichthys scolopaceus

硬骨魚綱ウナギ目シギウナギ科に属する海水魚。北海道から土佐湾の太平洋の沖合い、東シナ海、台湾南部など、ほとんど全世界の北緯55度~南緯42度までの温帯から熱帯海域にわたって分布する。体は側扁(そくへん)して著しく細長く、尾部は糸状に延長する。未成熟魚と雌では吻(ふん)と上下両顎(りょうがく)はくちばし状に長く突出し、上顎上方へ、下顎下方へ湾曲し、両顎はかみ合わない。成熟した雄では両顎は短く、歯がなくなる。上顎の後端は目の後縁をわずかに越える。肛門(こうもん)は著しく前方にあり、胸びれの下方に開く。背びれは胸びれの前上方から、臀(しり)びれは胸びれ基底のわずかに後方から始まり、尾びれとつながる。両基底長は著しく長い。背びれ軟条は325~423、臀びれ軟条は312~444。背びれ軟条は臀びれ軟条より短く、背びれの中央部の約130の軟条は前後のものより低い。鱗(うろこ)はない。側線孔は、各体節に5個ずつある。長方形四隅とその中央近くに一つ、さいころの5の目のような形の小孔(こあな)が開き、全体としては上列、中列、下列の3孔列になる。脊椎(せきつい)骨数は約450~500個。体は背側面では淡褐色で、腹側面では濃褐色~黒色。最大全長約1.4メートル。昼間は水深300~2000メートル層で生息し、夜間は100メートル以浅に上昇することもある。海底から離れて垂直姿勢で、ほとんど動かず、長いくちばしにサクラエビ類の長い触角をからませて摂餌(せつじ)していると考えられている。レプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)期を経る。約21センチメートルで変態を開始し、30センチメートルほどで変態を終えて体は細長くなる。底引網や中層トロール網にまれに入る。静岡市の三保(みほ)海岸では、ときに生きたまま打ち上げられることがある。

[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「シギウナギ」の意味・わかりやすい解説

シギウナギ
slender snipe eel
Nemichthys scolopaceus

ウナギ目シギウナギ科の海産魚。太平洋,大西洋,インド洋の温帯から熱帯にかけての深海に広く分布しているものと思われる。体は著しく細長く,側扁していて,尾部は糸状にのびている。眼は大きい。上下両あごは長く,それぞれ背腹に反っていて,それらの先端部はかなり離れている場合が多い。上後頭骨がないことも大きな特徴。腹びれはなく,肛門は胸びれの腹側に開く。全長およそ140cm。日中は中層ないし底層を遊泳し,夜間は表層まで浮上してくる。おもな餌はエビ類。仔魚(しぎよ)はレプトセファラス(葉形幼生)で,全長およそ30cm。まれに漁獲されるだけで産業的価値はない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シギウナギ」の意味・わかりやすい解説

シギウナギ
Nemichthys scolopaceus; slender snipe eel

ウナギ目シギウナギ科の魚。深海魚の1種。全長 1.4mに達する。体は側扁し著しく細長い。両顎も著しく長く,上顎は上方へ,下顎は下方へ湾曲する。体の背面は淡黄褐色か淡褐色で,側面,腹面は黒褐色である。日本,太平洋,北大西洋,地中海,インド洋に分布する。

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