シティパティ(読み)してぃぱてぃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シティパティ」の意味・わかりやすい解説

シティパティ
してぃぱてぃ
[学] Citipati osmolskae

竜盤目獣脚類(亜目テタヌラ類(下目)コエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル類Maniraptoraオビラプトロサウルス類Oviraptorosauriaオビラプトル科Oviraptoridaeオビラプトル亜科Oviraptorinaeに属する恐竜

 モンゴル・ゴビ砂漠のウハ・トルゴッドUkhaa Tolgodという所のジャドフタDjadokhta層から、約7700万年前の白亜紀後期の化石、オビラプトル類が鳥のように卵を抱いた姿勢で発見されたと公表されたのは、1995年のことであった。これは、アメリカとモンゴル科学アカデミーが共同でモンゴル中南部を調査し、1993年に発掘された、全長2メートルあまりの恐竜であった。化石は肋骨(ろっこつ)と四肢骨で、頭や尾の骨はなかったが、2本の後肢の骨は平行に並んで折りたたまれていた。体の下には少なくとも15個の卵の化石がみつかり、円状に並んだ推定約22個の卵を挟むように後肢が配置されていた。卵の大きさは長さ18センチメートル、幅6.5センチメートルであった。研究グループの解析では、この恐竜は産卵中ではなく、鳥のように卵を抱いて温めていた最中砂嵐の砂に埋まってしまい死んだのだと判断された。

 このオビラプトル類はのちに多数の標本で詳しく研究され、新属種シティパティ・オスモルスカエCitipati osmolskaeとして2001年に命名された。属名の由来は、火葬用の薪(まき)の山を守るヒマラヤ守護神にちなんでいる。片仮名表記としては、シチパチ、あるいはキティパティと表現されることもあるが、シティパティと同一属である。全長3メートルほどあると推定され、胚(はい)期の骨格も認められている。

 シティパティは、(1)オビラプトル類としては体が大きい、(2)とさかのある頭骨をもち、とさかは鼻骨の上にのっている、(3)後頭部と方形骨は背中に向け傾斜している、(4)頬骨(きょうこつ)の後眼窩(がんか)突起は頬骨の腹側突出部に対し垂直をなす、(5)外側鼻孔は大きく涙滴状の形を呈す、(6)鱗(りん)状骨突起が長い、(7)頬骨の縦軸が口蓋(こうがい)となす角度は大きい、(8)頬骨の上顎(じょうがく)末端はふつう眼窩縁を越えてくちばしのほうへ伸びるが、この部分の長さが非常に長い、(9)頬骨の後眼窩突起は長くて、背中側では後眼窩骨の頬骨突起のほとんど基底にまで達する、などの特徴により、独立した属とみなされたわけである。

[小畠郁生]

『M・J・ノヴァツェク、M・ノレル、M・C・マッケナ、J・クラーク著、小畠郁生訳、日経サイエンス編集部編「化石の宝庫 ゴビ砂漠の恐竜たち」(『別冊日経サイエンス145 地球を支配した恐竜と巨大生物たち』pp.32~41. 2004・日経サイエンス社)』『David B. Weishampel, Peter Dodson, Halszka Osmólska eds.The Dinosauria 2nd ed. (2004, University of California Press, Berkley)』

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