シデムシ(読み)しでむし(英語表記)carrion beetles

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シデムシ」の意味・わかりやすい解説

シデムシ
しでむし / 埋葬虫
carrion beetles

昆虫綱甲虫目シデムシ科Silphidaeに属する昆虫の総称。広く世界各地に産するが、北半球の温帯域に多く、およそ250種ぐらいが知られ、日本には35種ほどが分布している。10~20ミリメートル前後の中形の種類が多い。細形で後方がすこし広がり、上ばねが短く先端が切断状で腹部後半が露出するモンシデムシ類Nicrophorusと、それらに似たモモブトシデムシNecrodes、それに楕円(だえん)形で平たいヒラタシデムシSilphaがあり、ほかにオサシデムシ、ツヤシデムシ、チシマシデムシのような小形の類があるが、このうち頭に単眼を二つもっているツヤシデムシの一部の属(Pteroloma)の種は近年ハネカクシ科のヨツメハネカクシ類に含められることが多い。

 シデムシは、小形のものは除き、おもに動物の死体に集まり、幼虫もこれを食べるが、モンシデムシ類は成虫がネズミやヘビなどの死肉を丸めて地中に埋め、その周囲に産卵し、かえった幼虫がその肉を食べて育つのを見張る習性が知られている。ヒラタシデムシやモモブトシデムシは死体や糞(ふん)に集まり、それらに発生するウジを捕食するものもあるが、なかにはヨツボシヒラタシデムシXylodrepa sexcarinataのように樹上にすみ、鱗翅(りんし)類の幼虫などを捕食するものもあり、またクロヒラタシデムシPhosphuga atrataのようにカタツムリを食べるもの、分解した植物質やテンサイなど農作物を食べるものなどもある。小形のオサシデムシIperates striatipennisは花上や葉上にみられ、ムナグロツヤシデムシApteroloma discicolle石下などにいる。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シデムシ」の意味・わかりやすい解説

シデムシ
Silphidae; carrion beetle; sexton beetle

鞘翅目シデムシ科に属する昆虫の総称。小~大型の甲虫で,外形は幅広く扁平なもの,細長いもの,角形のものなどかなり多様である。色彩は黒みがかったものが多いが,赤や黄色の斑紋のあるものも少くない。頭部には大きな複眼があり,前方に突出して基部が頸状にせばまるものと,前胸背前縁下部に隠れるものとがある。触角は短く,11節から成り,先端の3~4節は拡大して棍棒状または球稈状になっている。大腮は大きく,口枝は発達している。上翅は大きく,腹部を完全におおうものと,翅端が切断状で腹部の先端が露出するものとがある。後翅は発達しているものが多い。肢は強壮であるが比較的短く,跗節は通常5節であるがまれに4節のものもある。ハネカクシ (科) に近縁で,世界に約 250種が知られ,そのうち日本産は約 30種。大部分の種は腐敗した動物の死体を食べるが,虫食性,草食性のものもある。ヤマトモンシデムシ Nicrophorus japonicusは体長 20mm内外,頭部は大きく,複眼後方は頬状に肥大し,顕著な頸部をもつ。上翅に幅広い赤色横帯が2本ある。雄の後肢脛節は弓状に湾曲する。本州,四国,九州,朝鮮,台湾,中国,モンゴルに分布する。オオヒラタシデムシ Eusilpha japonicaは体長 23mm内外,体は扁平でやや青みを帯びた黒色である。頭部は小さく,前胸のくぼみに入る。上翅には各4条の縦隆起がある。北海道,本州,四国,九州,台湾に産する普通種で,腐敗動物質に集る。

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百科事典マイペディア 「シデムシ」の意味・わかりやすい解説

シデムシ

ヤマトモンシデムシとも。シデムシ科の甲虫。体長23mm内外,黒色で,翅に4個の赤紋がある。日本全土,朝鮮,シベリア東部,中国に分布。動物の死体を土中に埋め,幼虫の食物とし,母虫は幼虫が成育するまで保護する。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。同属のものは日本にはヨツボシモンシデムシなど9種いて,同様な習性をもつ。シデムシ科には他に汚物や腐肉に集まるが,幼虫を保護する習性のないヒラタシデムシ類やモモブトシデムシ類なども含まれる。

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