日本大百科全書(ニッポニカ) 「シヌグ」の意味・わかりやすい解説
シヌグ
しぬぐ
琉球(りゅうきゅう)諸島の年中行事の一つ。鹿児島県奄美(あまみ)諸島沖永良部(おきのえらぶ)島、与論(よろん)島、沖縄県国頭(くにがみ)郡一帯、中頭(なかがみ)郡与勝(よかつ)諸島、島尻(しまじり)郡伊平屋(いへや)列島、久高(くだか)島などに分布する。期日は旧暦7月の亥(い)の日とする土地が多いが、6月や8月になっているところもある。行事は村により複雑に変化しているが、作物の害虫や害獣を駆除する祓(はらい)の行事が共通してみられる。久高島では、3月29日をハマシーグ(浜シヌグ)といって夏の作物の害虫を祓い、7月29日にはヤーシーグ(屋シヌグ)といって冬の作物の祓をする。シヌグは本来、男子の成人儀礼的な機能もあわせもった村落組織による祓の行事であったらしい。伊是名(いぜな)島では7月18日のシヌグには、5歳、7歳、9歳の男子が男の神役に引率されて小高い岩山に登る習わしがあり、村に帰って、そのまま家々を祓って回ることになっていた。国頭郡や与論島、沖永良部島ではもっとも大掛りな村の行事の一つになっており、女子を中心にした祈願の神事である海神祭(うみがみまつり)と一対をなし、隔年に行う村もある。『琉球国由来記』(1713)には「シノゴ折目」などとみえ、国頭郡北部では、海神祭とともに「年越」としている。琉球諸島の麦・稲など穀物栽培の農閑期で、農耕暦の年越の行事の意味があったらしい。シヌグとは「凌(しの)ぐ」という語と同根かと思われるが確かではない。
[小島瓔]