改訂新版 世界大百科事典 「シマロン」の意味・わかりやすい解説
シマロン
cimarrón[スペイン]
スペイン植民地時代初期には野生化した家畜を意味したが,16世紀後半からは黒人逃亡奴隷を指すようになった。英語ではマルーンmaroonと呼ぶ。シマロンの発生はインディアスの征服直後から植民地社会の問題であったが,17世紀の奴隷貿易の拡大とともに活発化し,18世紀のプランテーション経済の成長に並行して,さらに増大した。その分布はメキシコ最北端からペルー,エクアドルの太平洋岸に至るインディアスのほぼ全域にわたるが,中心は奴隷労働力が集中的に導入されたカリブ海地域,コロンビア,ベネズエラ,中米の海岸地帯,およびブラジルの海岸地帯と熱帯内陸部である。シマロンの多くは短期間のうちに連れ戻され,アキレス腱切断から四肢切断,宮刑,死刑にいたる厳罰に処せられたが,熱帯密林地帯や山間僻地にパレンケ(スペイン領),キロンボ(ブラジル)と呼ばれるシマロン社会を形成し,19世紀の奴隷制廃止にいたるまで植民地の白人社会に脅威を与え続けた例も少なくない。
執筆者:清水 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報