シャーワリーウッラー(その他表記)Shāh Walī Allāh

改訂新版 世界大百科事典 「シャーワリーウッラー」の意味・わかりやすい解説

シャー・ワリー・ウッラー
Shāh Walī Allāh
生没年:1703-62

インドのイスラム思想家。デリーに生まれ,父は有名なスーフィー学者。彼の生涯は,ムガル帝国の崩壊の時期にあたっていた。30歳前後のころ,メッカメディナで,イスラム神学法学を学び,帰国後,一般ムスリムへの教育にあたり,ヒンドゥー教の影響を受けたムスリムの間の社会慣習の改革を訴えた。彼はイスラムの思想の浄化を目ざしたが,単に,イスラム神学・宗教思想の面にとどまらず,当時の社会体制にまで批判を向けた。インドにおける近代イスラム思想の先駆者とみなされており,彼の死後,その理論は子のアブドゥル・アジーズShāh`Abd al-`Azīz(1746-1824)に受け継がれ,実践に移された。彼の思想は19世紀に入って反英運動へと発展していった。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「シャーワリーウッラー」の解説

シャー・ワリーウッラー
Shāh Walī Allāh

1703~62

インドのイスラーム改革思想家。デリー生まれ。神学者であった父から学び,さらにメッカメディナで学んで,帰国後,教育と著作に従事。衰退期のムガル帝国の現実を目撃しつつ,イスラームと社会の改革を訴えた。コーランハディースにもとづいて,イスラームの宗教的対立の止揚聖者崇拝などの非イスラーム的な社会慣習の改革を説き,搾取的な当時の社会体制を批判した。また,コーランのペルシア語訳も行った。彼の思想は,19世紀の反英運動に大きな影響を与えた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャーワリーウッラー」の意味・わかりやすい解説

シャー・ワリーウッラー
Shāh Walī-allāh

[生]1702/1703. デリー
[没]1762. デリー
インドのイスラム神学者,近代イスラム思想の創始者アラビアヒジャーズ地方におもむき,特にハディース研究を修めた。思想的には伝統主義立場に立ちながらも,ムガル帝国末期のムスリム社会の状況を見つめ,時代変化に対応しうる寛容を説いた。

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