シュタウディンガー(読み)しゅたうでぃんがー(英語表記)Hermann Staudinger

デジタル大辞泉 「シュタウディンガー」の意味・読み・例文・類語

シュタウディンガー(Hermann Staudinger)

[1881~1965]ドイツの化学者。天然の高分子化合物の構造を解明し、プラスチック時代への道を開いた。1953年、ノーベル化学賞受賞。

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精選版 日本国語大辞典 「シュタウディンガー」の意味・読み・例文・類語

シュタウディンガー

  1. [ 一 ] ( Franz Staudinger フランツ━ ) ドイツの哲学者、社会主義者。新カント学派に属し、カントの目的の王国の実現を社会主義社会の実現と同視し、カント倫理学と社会主義を結合しようとした。生活協同組合運動の指導者としても知られる。主著「道徳の経済的基礎」。(一八四九‐一九二一
  2. [ 二 ] ( Hermann Staudinger へルマン━ ) ドイツの化学者。[ 一 ]の子。フライブルク大学教授。イソプレン合成ゴム)の重合研究から高分子研究に進み、鎖状高分子化合物の構造を解明。一九五三年ノーベル化学賞を受賞。(一八八一‐一九六五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュタウディンガー」の意味・わかりやすい解説

シュタウディンガー(Hermann Staudinger)
しゅたうでぃんがー
Hermann Staudinger
(1881―1965)

ドイツの有機化学者で、高分子化学の創設者。新カント派の哲学者を父として3月23日にウォルムスで生まれた。シュタウディンガーは、同地のギムナジウムを卒業したときには、植物学を志していたという。しかし当時のドイツは世界の化学とくに有機化学の中心であった。彼はミュンヘンで大有機化学者アドルフ・フォン・バイヤーの教えを受けて化学者の道を選ぶことになった。そして1905年、シュトラスブルクティーレのもとで助手をしているときに発見したきわめて興味ある物質「ケテン」は一躍学界の注目を集めた。わずか24歳のときである。こうして彼は1907年、26歳の若さでカールスルーエ工業大学の教授となった。カールスルーエ時代の弾性ゴムの研究は、やがて化学の新領域「高分子化学」樹立の道へと彼を導くことになる。彼はケテンに関する約60編に及ぶ大研究をまとめ、1920年ごろからは本格的に高重合体(今日の高分子)の研究に入った。

 当時ドイツの学会では弾性ゴムやセルロース、タンパクなどの化学構造に関し、まったく違う二つの立場の人々が論争を展開していた。一つはいわゆる低分子説で、ヘスKurt Hess(1888―1961)、ハリエスC. Harries(1866―1923)らをリーダーとするものである。低分子論者によると、ゴムやセルロースは比較的小さな分子量の環状化合物が多数コロイド状に「会合」あるいは「凝集」したものである。一方シュタウディンガーやフロイデンベルクK. Freudenberg(1886―1983)は、これらの物質はきわめて多数の原子が、エタン分子内の結合力と同じ一次結合(今日の共有結合による化学結合)で長鎖状に連結した巨大分子であると考えた。そして1926年の学会はヘスらの低分子論者の圧倒的優勢裏に終結したが、そのわずか4年後、1930年のドイツ・コロイド学会では低分子論者はまったく孤立し、ほぼすべての有機化学者がシュタウディンガーらの高分子説を支持するようになった。これはまさにコペルニクス的転回に近い劇的な転換であった。シュタウディンガーの長い闘いは約30年ののち、1953年のノーベル化学賞によって報いられた。そのとき彼はすでに73歳であった。シュタウディンガーの高分子説は1930年代、アメリカカロザースによる合成ゴム「ネオプレン」、合成繊維ナイロン」の成功により確固たる地位を得て、今日のプラスチック時代を開いたのである。1957年(昭和32)来日した。1965年9月8日フライブルクで死去。

[中川鶴太郎]


シュタウディンガー(Franz Staudinger)
しゅたうでぃんがー
Franz Staudinger
(1849―1921)

ドイツの哲学者、社会学者。ウォルムス、ダルムシュタットの高等学校(ギムナジウム)教授。新カント学派に属し、カントの倫理学説によって社会主義に道徳的基礎を与えることに努めた。主著『道徳の経済的基礎』(1907)において、社会関係を、策略と暴力とに基づく物理的関係、自己利益に基づくゲゼルシャフト関係、共通目的目ざしての自発的協力たるゲマインシャフト関係の三つに分け、ゲマインシャフト関係が上位にたつ社会こそ真に道徳的であり、社会主義が建設の目標にしなければならないものであると説いた。またこの見地から、労働者の自発的互助組織としての生活協同組合運動を理論的、実践的に指導した。

[森 博 2015年2月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「シュタウディンガー」の意味・わかりやすい解説

シュタウディンガー
Hermann Staudinger
生没年:1881-1965

ドイツの有機化学者,高分子化学者。新カント学派の哲学者フランツ・シュタウディンガーFranz Staudinger(1849-1921)の息子。ウォルムスに生まれ,1903年ハレ大学で学位を得,チューリヒのスイス連邦工科大学(1912-26),フライブルク大学(1926-51)の化学教授を歴任,51年高分子研究所長となった。はじめにケテン類の研究で名をなし,次いで行ったイソプレン研究から重合物の構造に関心を深め,1920年ゴム,ポリスチレンなどのポリマーが鎖状の大分子からなると発表,2年後にこれを〈巨大分子Makromolekül〉と名づけた。彼の説は当時支配的だった〈会合体説〉の支持者に反対されたが,論争の末30年代に学界に受け入れられるに至った。《高分子有機化合物》(1932)をはじめとする一連の書物と多数の論文を著し,専門誌《巨大分子化学》(1945-)を刊行するなど高分子化学成立への道を開き,53年ノーベル化学賞を受賞した。
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化学辞典 第2版 「シュタウディンガー」の解説

シュタウディンガー
シュタウディンガー
Staudinger, Hermann

ドイツの有機化学者,高分子化学者.新カント派哲学者の父F. Staudingerの次男として生まれる.1903年ハレ大学で学位を取得.シュトラスブルク大学の助手時代にケテンを発見し,有機化学者としての地歩を固め,1907年カールスルーエ工科大学員外教授となる.1912年スイスのチューリヒ連邦工科大学の教授となり,合成ゴムに関心をもつようになる.1926年フライブルク大学教授となる.1920年以降,一連の論文で,ゴム,セルロース,プラスチック,タンパク質などが巨大分子(Makromolekül) (高分子)からなり,ポリマーに特有な物性が分子の大きさや形状に由来することを主張した.また,ポリマーの希薄溶液の粘度と分子量の関係を式で表した.当時,ポリマーは小分子の会合体と考えられていたため,高分子説は当初,学界で強い反対を受けたが,1930年代後半までに広く受容された.高分子化学の創始者として,1953年ノーベル化学賞を受賞した.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュタウディンガー」の意味・わかりやすい解説

シュタウディンガー
Staudinger, Hermann

[生]1881.3.23. ヘッセン,ウォルムス
[没]1965.9.8. フライブルク
ドイツの化学者。 1903年ハレ大学で学位取得後,シュトラスブルク大学助手 (1903) ,カルルスルーエ工科大学教授 (07) ,チューリヒのスイス連邦工科大学教授 (12) ,フライブルク大学教授 (26~51) ,同大学高分子化学研究所所長 (40) 。ケテンを発見,その自動酸化,重合,イソプレンの重合,スチレン,イソブチレン,酢酸ビニルなどの重合の研究などを通し,今日の付加重合による高分子化学の基礎を築いた。高分子が低分子量の分子の集合体でなく巨大分子そのものであることを初めて明らかにした。しかし,その主張が学界の総反撃を受け,認容されるまで数年を要したことは有名である。高分子物質溶液の粘度と分子量との関係式を見出した。 53年ノーベル化学賞受賞。

シュタウディンガー
Staudinger, Franz

[生]1849.1.15. グロースゲラウ
[没]1921.11. ダルムシュタット
ドイツの社会主義哲学者。社会主義の立場から倫理学を考究した。主著『倫理の経済的基礎』 Wirtschaftliche Grundlagen der Moral (1907) ,『政治の文化的基盤』 Kulturgrundlagen der Politik (14) 。

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百科事典マイペディア 「シュタウディンガー」の意味・わかりやすい解説

シュタウディンガー

ドイツの化学者。カールスルーエおよびスイス連邦工科大学教授を経て,1926年フライブルク大学教授。1951年同大学高分子化学研究所長。1905年ケテン(ケトン基に二重結合した炭素原子をもつ一連の化合物)を発見。その後,高分子化合物の基礎研究に移り,ゴムの研究から高分子化合物の鎖状分子構造を明らかにし,高分子溶液の粘度と分子量の関係式を見いだすなど,今日の高分子化学およびその工業の基礎を築いた。1953年ノーベル化学賞。
→関連項目化学繊維合成樹脂

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367日誕生日大事典 「シュタウディンガー」の解説

シュタウディンガー

生年月日:1849年1月15日
ドイツの社会主義哲学者
1921年没

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