高分子(巨大分子)物質を対象とする化学の分野。高分子物質には小さい分子(低分子)からなる物質とは異なる特徴がいろいろあり,それらが高分子化学の対象となる。大別すると,高分子の物理的ないし物理化学的性質を扱う分野と,化学的性質を扱う分野がある。前者には,高分子物質の1個の分子の構造および分子の集合体の構造を扱う構造論,固体の熱的性質,力学的性質,電気的性質などを対象とする固体論,希薄溶液や濃厚溶液の性質を扱う溶液論がある。後者には,高分子化合物が低分子の出発物から生成するときの特徴を扱う高分子生成論(合成論)と,高分子化合物の反応性の特徴を扱う反応論とがある。高分子化学の歴史は比較的新しく,高分子の概念そのものがドイツのH.シュタウディンガーらによって確立されたのは1930年ころのことである。高分子化学は高分子材料の実用と密接に結びついて発展してきた。高分子の物理的性質と構造との関係を理解することは,高分子材料の実用的性質の理解に直結し,また高分子材料を繊維,プラスチック,ゴム等の製品にするプロセスにとって不可欠である。高分子の生成反応の特徴の把握は原料から所望の分子構造をもった高分子化合物を合成するための基礎であり,高分子の反応性の理解は高分子物質を変換し望ましい機能を付与するために必須である。タンパク質,核酸のような生体高分子の性質の一部も高分子化学の対象である。
→高分子
執筆者:井上 祥平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
高分子化合物の合成法や、その物性を研究する化学の一分野。前者は高分子合成化学、後者は高分子物性化学と大別される。高分子合成化学は主として石油を原料として合成繊維、合成ゴムやプラスチックをどのような方法でつくっていくか、またその道筋の学問的な研究であり、高分子物性化学は高分子としての特異な性質を対象とする。すなわち高分子化合物は分子が巨大になっているため、気体としては存在せず、主として室温で固体、加熱すると粘い液体として存在する。ある種の溶媒を加えると、溶解して粘い溶液となるか膨潤する。さらに固体のものは機械的強度をもち材料として用いられるので、それらの性質を溶液の熱力学的取扱いや、構造材料としてレオロジー的な取扱いも行われている。
さらに最近は天然高分子物質の合成過程が生物化学的な立場から取り扱われ、また生体が関与する合成によってのみつくられていた各種タンパク質や核酸の2、3のものも、現在では合成されるようになった。
1932年ごろにドイツのシュタウディンガーによって発展し、アメリカのカロザースによるナイロンの発明によって高分子化学が学問として確固たる地位を築いた。最近は統計力学や量子力学なども導入され、またそれらの学問の発展が高分子化学の発達を促した。近年は生体に関する高分子化学、特異な性質をもった高分子化合物に関する機能性高分子化学が注目されている。
[垣内 弘]
『八木一文著『高分子化学の話』(1964・創元社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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