日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティーレ」の意味・わかりやすい解説
ティーレ(Friedrich Karl Johannes Thiele)
てぃーれ
Friedrich Karl Johannes Thiele
(1865―1918)
ドイツの有機化学者。ブレスラウやハレの大学で学んだのち、ミュンヘンのバイヤーのもとで化学助教授、ついでストラスブール大学化学教授となった。とくに共役二重結合について研究し、付加反応の説明として「部分原子価」を考えた。たとえば、1,3-ブタジエンでは、内側の2個の炭素原子間の部分原子価は相殺されるので、両端の炭素原子にのみ付加がおこるという。一方で、当時不飽和化合物と考えられていたベンゼンに付加反応がおこらないのは、環状であるため、すべての部分原子価が相殺されるからであるとした(1899)。彼の理論は不完全ではあるが、後の有機電子論に基づく反応機構解明の先駆となった。ほかには、窒素有機化合物の研究が重要である。
[吉田 晃 2018年9月19日]
ティーレ(Cornelis Petrus Tiele)
てぃーれ
Cornelis Petrus Tiele
(1830―1902)
オランダのプロテスタント神学者、宗教史学者。同国のアルミニウス派教会の牧師や神学校の教授を務めたのち、1877~1901年、ライデン大学に新設された宗教史・宗教哲学講座を担当した。エジプト、メソポタミア、イランなどの宗教史の原資料による研究を開拓する一方、進化論的な図式を用いて、それらを壮大な人類宗教史にまとめ上げた。マックス・ミュラーと並んで、近代宗教学の創始者の一人に数えられ、日本の宗教学の初期の代表者たち(姉崎正治(あねさきまさはる)、加藤玄智(かとうげんち)(1873―1965)など)にも大きな影響を与えた。
[田丸徳善 2016年10月19日]