日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュピーゲル」の意味・わかりやすい解説
シュピーゲル
しゅぴーげる
Der Spiegel
ドイツの代表的なニュース週刊誌(誌名は「鏡」の意味)。1946年ハノーバーで創刊された『ディーゼ・ボッヘ』(「今週」)が前身、1947年現誌名に改題。発行元はハンブルクのシュピーゲル・フェアラークSpiegel-Verlag、初代発行人はルードルフ・アウクシュタインRudolf Augstein(1923―2002)。販売部数は、競合誌『シュテルン』Stern(1948年創刊)を抜いてドイツ最多で、常時100万部前後の水準にある。第二次世界大戦後のドイツ・ジャーナリズム史上で独自の位置を占め、報道の自由をめぐる活動やスキャンダル暴露で名を馳(は)せ、時の政権や政治家に対して左寄りの批判的姿勢を貫いてきた。1962年の「シュピーゲル事件」では、NATO(ナトー)(北大西洋条約機構)と西ドイツの防衛力を扱った記事が発端となり、国家機密漏洩(ろうえい)の嫌疑で社員が逮捕されたが、捜査の違法性などに対する世論の批判は強く、国防相は辞任に追い込まれた。この事件が同誌の評価を決定づけ、とくにインテリ層のオピニオン・リーダー的な地位を確立する。しかし1990年代からは多少中道寄りの姿勢に変化したともいわれ、世論への影響力も以前ほどではない。背景に、当初から同誌の対抗馬を目ざした週刊誌『フォークス』Focusの出現(1993年創刊)を指摘する見方もある。インテリ向きの独特な文体には以前から批判も多いが、文化・学術面の話題や自社特派員の海外報告も含め、長文記事中心の内容は質が高く、ドイツでの地位は当分揺らぎそうにない。
[江代 修]