有権者全体のなかで高い割合を占める高齢者向けの施策が優先される政治のこと。日本ではとくに2000年代後半に団塊の世代が定年退職の時期を迎え、有権者に占める高齢者の比率が上昇した。しかも20~30歳代の有権者の投票率が低いことから、政治家も高齢者の声に耳を傾けがちになり、「高齢者の声が通りやすい政治」が現出した。国政の場よりも深刻なのが地方自治体で、保育園の増設、小学校の耐震補強などの予算よりも、高齢者向け文化センターの建設、高齢者向けイベントへの支援金措置などが優先される事態が頻発している。シルバー民主主義の問題点は、若年層の福祉を意図的に軽視することである。たとえば、正社員としての就職がかなわず短期の派遣社員として不安定な生活を送る若者に対し、「本人のやる気不足」「親の教育の問題」といった精神論でかたづけ、構造的問題としてとらえることを避けようとする。これが日本の活力をそぎ、長期にわたる経済の低迷を招いていると指摘する識者も多い。シルバー民主主義の蔓延(まんえん)を避けるためには、若年層を含むすべての有権者に投票を義務づけること、一票の格差を完全になくし都市部で働く若年層の声が政治に反映されやすくすること、などの対策が考えられる。
[編集部]
(2013-11-22)
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