改訂新版 世界大百科事典 「シロイルカ」の意味・わかりやすい解説
シロイルカ
white whale
Delphinapterus leucas
ハクジラ亜目イッカク科の哺乳類。北半球の寒帯,亜寒帯に生息する白色のイルカ。出生時には灰褐色で,しだいに淡くなり成体では純白となる。背びれはないが,類似の小隆起が背中の中ほどにある。歯は上下左右に各8~10本。体長4.5mに達する。流氷を追って季節的に移動する集団としない集団とがある。成長速度や妊娠率などは産地によって異なる。春に交尾をし,夏には暖かい河口域に集まって1子を生む。妊娠期間は11~14.5ヵ月。2~3年に1回出産。1.5mで生まれた子は翌年には餌をとり始め2年で離乳する。雌は4~7年,雄は6~9年で成熟し,寿命は25年以上。ふつう数頭~数十頭の群れをなす。イカ,サケ,ニシンなどを食す。天敵はシャチ,ホッキョクグマ,セイウチ。かつて追込漁業や網漁などで大量に捕獲され資源が激減し,今日ではエスキモーが銃ともりで自家消費用に捕獲しているだけである。セントローレンス湾の数百頭の個体群はPCBなどの汚染物質の蓄積により数が減少し,動向が危ぶまれている。
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報