シンコペーション(英語表記)syncopation

翻訳|syncopation

精選版 日本国語大辞典 「シンコペーション」の意味・読み・例文・類語

シンコペーション

〘名〙 (syncopation) 本来弱拍となるところに強拍アクセントをつけ、強拍のところを弱拍とするなど、故意に拍子やリズムをちがわせて、曲の印象を強くする音楽上の手法ジャズに多くみられる。切分法切分音。〔白眉音楽辞典(1926)〕
※さらばモスクワ愚連隊(1966)〈五木寛之〉一「靴先で軽くシンコペイションのリズムを取っていた」

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デジタル大辞泉 「シンコペーション」の意味・読み・例文・類語

シンコペーション(syncopation)

音楽で、強拍と弱拍の位置を本来の場所からずらしてリズムに変化を与えること。切分法。切分音。

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改訂新版 世界大百科事典 「シンコペーション」の意味・わかりやすい解説

シンコペーション
syncopation

リズムに関する音楽用語で,切分音と訳される。一般に,基準となる拍節パターンを破るアクセントの移動をいう。具体的には,(1)最も一般的な方法は弱拍の音を次の強拍の音とタイtie(同じ高さの2音を結ぶ弧線)などで結んで後者のアクセントを先取りさせる,(2)強拍部を休止させ,そのアクセントを次の弱拍の音にずらす,(3)弱拍の音にアクセントをかけて強弱の関係を逆にする,などがある。この語は本来,音節の〈脱落〉を意味するギリシア語の文法用語であったが,14世紀にいたって音楽理論に転用されるようになった。実際の楽曲ではマショーらの作品に最初の用例が見られる。ポリフォニー音楽においてシンコペーションは各声部の独立性を際だたせる役目を果たしたが,しだいにホモフォニックな音楽が盛んになって,拍節の概念が確立し強固なものとなると,その規則性を破るものとして強い効果をもつようになった。このような効果を重んじたのがウィーン古典派の作曲家たちである(例えばハイドンの《弦楽四重奏曲ニ短調》作品76-2(1797)第1楽章)。さらにベートーベンは大胆な用法を創案し(《ピアノ・ソナタ第28番》作品101(1816)第1楽章),ロマン派にいたってシューマンの数多くの用法は内面の表出と深く結びついたものとなった(《クライスレリアーナ》(1838)など)。シンコペーションは,現代音楽においても,また各地の民族音楽においても豊かに用いられており,特にジャズにとってはきわめて重要なリズムの要素である。
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百科事典マイペディア 「シンコペーション」の意味・わかりやすい解説

シンコペーション

音楽用語。強拍と弱拍の正常なリズムがずれて,弱拍のところに強いアクセントが置かれること。ジャズではシンコペーションによる演奏を原則とする。→拍子リズム
→関連項目ニーグンラグタイム

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンコペーション」の意味・わかりやすい解説

シンコペーション
しんこぺーしょん
syncopation 英語
Synkope ドイツ語
sincope イタリア語

音楽用語。切分音(せつぶんおん)と訳される。アクセントや拍節の正規のパターンを変えることによって、リズムに不規則性(強拍部と弱拍部の位置の交替)を生じさせる効果のことで、それには主として次に示すような三つの方法がある。(1)弱拍部にアクセント記号をつける方法。(2)強拍部を休止する方法。(3)弱拍部を延長する方法。

 シンコペーションは古く中世の音楽にもみられるが、その場合は対位法による音楽のなかで各声部を際だたせるために、一声部ごとに用いられた。それに対し18世紀以降の音楽では、シンコペーションを全声部にわたって同時的に用い、今日的な意味での効果が意図されるようになった。なおシンコペーションは、ブルースやラグタイムやジャズなどの基礎ともなっている。

[黒坂俊昭]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シンコペーション」の意味・わかりやすい解説

シンコペーション
syncopation

音楽用語。「切分音」ともいい,拍子,アクセント,リズムの正常な流れを故意に変えることをいう。それには次の3つの方法がある。 (1) 同音高の弱拍部と強拍部を結び,強弱の位置を変える。同一小節の場合は1つの音符にまとめて書くか弧線 (タイ) で結び,続く小節にわたる場合は,タイで結んで表わす。 (2) 強拍部を休止にして,弱拍部のみ残しておくことによって,アクセントが移動する。 (3) 記号を弱拍部に付して,強弱の関係を逆にする。

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