翻訳|syncopation
リズムに関する音楽用語で,切分音と訳される。一般に,基準となる拍節パターンを破るアクセントの移動をいう。具体的には,(1)最も一般的な方法は弱拍の音を次の強拍の音とタイtie(同じ高さの2音を結ぶ弧線)などで結んで後者のアクセントを先取りさせる,(2)強拍部を休止させ,そのアクセントを次の弱拍の音にずらす,(3)弱拍の音にアクセントをかけて強弱の関係を逆にする,などがある。この語は本来,音節の〈脱落〉を意味するギリシア語の文法用語であったが,14世紀にいたって音楽理論に転用されるようになった。実際の楽曲ではマショーらの作品に最初の用例が見られる。ポリフォニー音楽においてシンコペーションは各声部の独立性を際だたせる役目を果たしたが,しだいにホモフォニックな音楽が盛んになって,拍節の概念が確立し強固なものとなると,その規則性を破るものとして強い効果をもつようになった。このような効果を重んじたのがウィーン古典派の作曲家たちである(例えばハイドンの《弦楽四重奏曲ニ短調》作品76-2(1797)第1楽章)。さらにベートーベンは大胆な用法を創案し(《ピアノ・ソナタ第28番》作品101(1816)第1楽章),ロマン派にいたってシューマンの数多くの用法は内面の表出と深く結びついたものとなった(《クライスレリアーナ》(1838)など)。シンコペーションは,現代音楽においても,また各地の民族音楽においても豊かに用いられており,特にジャズにとってはきわめて重要なリズムの要素である。
執筆者:津上 智実
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音楽用語。切分音(せつぶんおん)と訳される。アクセントや拍節の正規のパターンを変えることによって、リズムに不規則性(強拍部と弱拍部の位置の交替)を生じさせる効果のことで、それには主として次に示すような三つの方法がある。(1)弱拍部にアクセント記号をつける方法。(2)強拍部を休止する方法。(3)弱拍部を延長する方法。
シンコペーションは古く中世の音楽にもみられるが、その場合は対位法による音楽のなかで各声部を際だたせるために、一声部ごとに用いられた。それに対し18世紀以降の音楽では、シンコペーションを全声部にわたって同時的に用い、今日的な意味での効果が意図されるようになった。なおシンコペーションは、ブルースやラグタイムやジャズなどの基礎ともなっている。
[黒坂俊昭]
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