日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュナイド」の意味・わかりやすい解説
ジュナイド
じゅないど
Abū 'l-Qāsim al-Junayd
(?―910)
イスラムの神秘家。早くから、おじのサリー・サカティーSarī al-Saqati(?―865/867)やムハーシビーなどのスーフィーに師事した。ムハーシビーとともに、スーフィズムのバグダード派の代表者とみなされる。ビスターミーに代表されるスーフィズムのホラサーン派が、神のなかへの自己意識の「消滅」(ファナーfanā')と忘我的「酩酊(めいてい)」(スクルsukr)を強調したのに対し、その後にくる、高次の日常的意識への回帰である「残存」(バカーbaqā')と「覚醒(かくせい)」(サフウaw)の状態を強調し、スーフィズムと聖法の遵守の両立性を強調した。こうして彼は聖法を重視する穏健なスーフィズムに大きな影響を与え、多くのスーフィー教団は、その権威のよりどころとして、師資相承の鎖(シルシラ)のなかに彼の名を含めている。著書としていくつかの論文が残っている。
[竹下政孝 2018年4月18日]