スタグフレーション(英語表記)stagflation

翻訳|stagflation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

スタグフレーション
stagflation

景気停滞 stagnationと物価上昇 inflationの合成語で,これらが共存する現象をいう。物価水準は一般的傾向として好況期には上昇し,景気停滞期には低下するが,1970年以降欧米先進国で生産が停滞し,失業率が増大するなど停滞期にもかかわらず,物価は好況期に引続き高騰するという傾向が顕著になった。この現象は新しい型のインフレーションとして注目され,70年6月のイギリス総選挙で保守党政権が成立したとき,蔵相 I.マクラウドがイギリス経済の現状を形容して議会で使ったのが初めといわれる。このおもな原因は,景気停滞期において軍事費や失業手当など主として消費的な財政支出が拡大していること,労働組合の圧力によって名目賃金が急上昇を続けていること,企業の管理価格が強化され,賃金コストの上昇が価格上昇に比較的容易に転嫁されていることなどにあるとされている。

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百科事典マイペディアの解説

スタグフレーション

景気の停滞下で物価上昇が続く状態。スタグネーション(景気停滞)とインフレーション(物価上昇)の合成語。1970年,当時の英国蔵相I.マクラウドが演説の中で使ったのが最初といわれる。失業率の上昇と物価上昇は併存し得ないとされていたが,1970年代の第1次石油危機後に初めて世界的な現象として生じた。原因としては賃金と価格の調整の時間的ずれから生ずる行き過ぎ(オーバーシューティング),石油危機などの供給ショックが考えられる。
→関連項目インフレターゲット世界恐慌デフレーション日本

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ナビゲート ビジネス基本用語集の解説

スタグフレーション

スタグネーション(停滞)とインフレーションを合わせた言葉。景気が停滞している状況下で、同時にインフレーション(物価上昇)が起こる現象をいう。常識的には、景気が後退すると需要が減少し物価も下がると考えられるが、1970年頃より、このような特異な現象が見られるようになった。顕著な例として、1974年頃に発生した石油危機下のスタグフレーションがあげられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

スタグフレーション【stagflation】

高い失業率に代表される不況と,インフレーションとが共存する状態を指す。景気の低迷を意味するスタグネーションstagnationをインフレーションと結びつけて造られた言葉である。なおスランプフレーションslumpflationも同義である。1973年秋の第1次石油危機のあと,不況とインフレの二重苦に悩むアメリカ経済を指してマスコミが盛んに用いたが,現在では経済学用語として定着している。 第2次大戦後のアメリカ経済は,1950年代後半のクリーピング・インフレーションという不況下の物価上昇現象もあったが,主としてインフレ率と失業率との間には安定した負の相関関係(フィリップス曲線)があると考えられていた。

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大辞林 第三版の解説

スタグフレーション【stagflation】

〔stagnation(停滞)と inflation の合成語〕
経済活動が停滞しているにもかかわらず、インフレーションが進む現象。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

スタグフレーション
すたぐふれーしょん
stagflation

スタグネーションstagnation(経済停滞)とインフレーションinflationの合成語。不況とインフレが同時進行する状況を示す。通常、フィリップス曲線で示されるように、経験的には不況下において物価水準は下落しており、失業率を減少させるためには物価水準の上昇を受け入れなければならないという、失業とインフレの間のトレード・オフの関係が存在するとされる。しかしながら、1960年代後半ごろにイギリスにおいて失業率の上昇と賃金の高騰によるコストプッシュ・インフレーションが同時に発生した。さらに、1973年の第一次オイル・ショック時においては、世界同時不況が発生する最中、先進国は軒並み二桁(けた)台の率で物価水準が上昇した。こうした失業とインフレの共存する現象を説明すべく、ミルトン・フリードマンに代表される、マネタリズム(貨幣主義)的インフレ解釈と、同じく経済政策が登場するに至った。すなわち、ある程度の高い失業率の下でインフレがおこると、将来の予想インフレ率が追随して上昇してしまう。財政・金融政策による引締めでこれを抑制して現実のインフレ率を落としても、予想インフレ率がそれに追随して落ち着くまでは、高失業率と高インフレ率が共存するのがスタグフレーションであるとし、これを防ぐためにはケインズ的政策を放棄して、貨幣供給を安定させ、経済の自律性を発揮させることが重要であるとするものである。
 1979年のイラン革命に端を発した第二次オイル・ショックにより、世界経済はふたたびスタグフレーションの状況に追い込まれた。しかし、第一次オイル・ショック時には、1974年(昭和49)の日本の実質GDP(国内総生産)成長率が戦後初めてマイナスとなり、消費者物価の上昇率が20%を超えるほどであったのに対し、第二次オイル・ショックが日本経済に与えたインパクトは、第一次オイル・ショックほどには大きくならなかった。これは、第二次オイル・ショック時には、第一次オイル・ショック時と異なり国内要因のインフレがおきていなかったこと、第一次オイル・ショックの教訓を生かして財政面・金融面それぞれにおいて総需要抑制策・引締め策が迅速に行われたこと、そして賃金上昇率が抑えられたことなどが功を奏したものと思われる。[一杉哲也・羽田 亨]

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世界大百科事典内のスタグフレーションの言及

【インフレーション】より

…しかし実際には,アメリカにおいて1956‐58年にみられたように,不況と当時としては比較的高いインフレ率とが共存した時期もあった。さらに70年代において高い失業率と高いインフレ率の共存傾向がきわめて明らかになり,スタグフレーションという術語が経済学用語として定着した。こうした状況下でマクロ経済学においては自然失業率仮説が主流となった。…

※「スタグフレーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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