日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステビン」の意味・わかりやすい解説
ステビン
すてびん
Simon Stevin
(1548―1620)
オランダの土木技師、数学者。フランドルのブルーゲ(ベルギー領ブリュージュ)の生まれ。マウリッツ公と交遊が続き、1592年、運河工事を監督して認められ、軍に勤務した。1600年、ライデン大学工学部創設のための委員長となり、そこでラテン語でなくフランドル語で講義するという規定をつくった。これは彼の一貫した態度で、彼の著作はフランドル語で書かれている。1603年、陸軍主計総監に任ぜられ、生涯その職にあった。数学の著作には『数の概論』『ディオファントスの代数に関する6巻』『エウクレイデス第10巻の解説』『十進法』などがあり、その業績としては記号の導入が大きい。小数の表し方では、整数を〔0〕で示し、〔0〕の10分の1を〔1〕、〔1〕の10分の1を〔2〕、〔2〕の10分の1を〔3〕、……というように示し、たとえば、12.34は12+(3/10)+(4/102)であるから、12〔0〕3〔1〕4〔2〕と表した。加算と減算を表す記号の+(プラス)と-(マイナス)も導入した。また方程式も、定数項を〔0〕、xを〔1〕、x2を〔2〕、x3を〔3〕を用いて、〔3〕+6〔1〕égales à 20と表しているが、これは現代の記号でx3+6x=20となる。物理学の面ではアルキメデスの研究を発展させ、てこの原理の証明を与えるとともに、斜面の法則について数珠(じゅず)を用いた思考実験によって永久運動の不可能を証明し、力の合成則の定理を導いた。
[小堀 憲]