イタリアの弦楽器製作者。史上最高のバイオリン製作者と評され、現在の標準型バイオリンは彼をもって始まるとされる。1660年代にニコラ・アマーティの弟子となり、100年以上にわたって続いてきたクレモナのバイオリン製作の伝統を受け継いだ。1680年から1690年の間にアマーティのもとを離れ、それ以後独自の型を追求して、アマーティのものより大きく豊かな音色をもつ楽器を生み出した。1700年ごろから1720年ごろにかけてつくられたものは、ストラディバリの作品中もっともみごとなできばえをみせている。現存する弦楽器は約650で、うち約600がバイオリンである。そのほかにチェロやビオラなどがあるが、彼の楽器はラベルにAntonius Stradivarius Cremonenfisと名を入れているので「ストラディバリウス」の名をもち、今日も多くの名演奏家によって弾かれている。1737年12月18日、クレモナで没。92歳であった。彼の息子たちも楽器の製作を行ったが、長命であった父親の支配下にあったため、名をなさなかった。
[今谷和徳]
『渡辺恭三著『ミュージック・ギャラリー4 ヴァイオリンの銘器』(1984・音楽之友社)』
17世紀後半~18世紀にイタリアのクレモナで活動したバイオリンを主とする弦楽器製作者の一族。とくにアントニオAntonio(1644?-1737)は史上最高のバイオリン製作者といわれる。アマーティのもとで修業したのち,アマーティ型よりもやや大きく音量のある独自のバイオリンを完成し,それ以後のバイオリン製作の規範となった。今日真作とされているものには,約600のバイオリンのほかに,少数のすぐれたチェロ,ビオラが含まれている。ラベルにはストラディバリウスAntonius Stradivarius Cremonenfisの名を入れた。華麗な音色と豊かな音量,美しい外観をもつその楽器の秘密はワニスにあるともいわれるが,現在でも謎のままである。とくに名器とされる楽器には,その所有をめぐってさまざまな逸話や伝説が伝わっている。アントニオの息子のうちフランチェスコFrancesco(1671-1743)とオモボーノOmobono(1679-1742)も父の仕事を引き継いだが,その楽器の多くには父アントニオのラベルがはられていることがある。
執筆者:片山 千佳子
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