ストーマケア(読み)すとーまけあ(英語表記)stoma care

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストーマケア」の意味・わかりやすい解説

ストーマケア
すとーまけあ
stoma care

ストーマおよびストーマ装具を用いて行われる排泄(はいせつ)管理の総称。ストーマとは、人工的につくられた排泄孔のことで、手術などで排泄に関係する臓器を切除した場合などに造設される。人工肛門(こうもん)などの消化管ストーマと、人工膀胱(ぼうこう)などの尿路ストーマがある。ストーマには肛門や尿道口のように括約筋にあたるものがないため、自分の意思で排泄のコントロールを行うことができず、ストーマ装具を用いて排泄を管理する必要がある。これを「ストーマケア」とよび、ストーマ造設前から医師や専門の看護師によってストーマケアについての説明やトレーニングが行われ、徐々に患者自身で行えるようにしていく。ストーマ外来を設け、長期にわたりケアや支援を受けられるようにしている医療機関もある。

 ストーマ装具は、面板とストーマ袋(パウチ)から成り立っており、面板にはストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤がついていて、中央の円形の穴をストーマにあわせ、周りの皮膚に接着させる。面板とパウチが一体化しているタイプをワンピース装具、別々に分かれているタイプをツーピース装具といい、目的や使用方法、介助方法などによって使い分けられる。

 人工肛門では、ストーマ袋に便を収集する自然排便法が、ストーマケアの基本的な方法である。体力のない人でも無理なく行える利点があるが、前述の通り排便のタイミングは調整できない。ほかの方法としては、人工肛門から微温湯を入れて腸を刺激し、強制的に排便させる洗腸排便法がある。1~2日に一度の洗腸(浣腸(かんちょう))で、一定期間は便が出なくなる。排便のタイミングを調整できる利点があるが、浣腸のために1時間程度時間がかかり体力を要する。多量の湯を腹の中に注入するため、腸穿孔(せんこう)などの合併症の可能性もあることから、あらかじめ十分な指導を受けておく必要がある。

 ストーマを有する人を「オストメイト」とよぶ。患者会の日本オストミー協会は全国に支部があり、オストメイトの生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)向上のための幅広い活動を行っている。公共施設などでは、オストメイトがストーマ装具を交換する作業スペースを備えたトイレ(多機能トイレ)の設置も進んでいる。

[渡邊清高 2019年8月20日]

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百科事典マイペディア 「ストーマケア」の意味・わかりやすい解説

ストーマケア

ストーマとはギリシア語で口のこと。ストーマケアとは,大腸癌(がん)や膀胱腫瘍などで便や尿のストーマである人工肛門や人工膀胱などを造設された人たちに,それぞれのストーマの管理方法を指導したり,管理の援助をすること。 ストーマケアの方法には〈洗腸法〉と〈袋吊り下げ法〉の二つがある。 〈洗腸法〉は,毎日もしくは1日おきに,人工肛門などから湯を注ぎ込み,この湯と一緒に内容物を洗い流してしまうもの。身体の外側に袋をぶら下げる必要がないので快適な日常が送れる反面,洗腸作業に1〜2時間もかかるという欠点がある。 また,この方法は,イレウス腸閉塞症)や横行結腸によるストーマなど右側にストーマを持つ人,腸に憩室がある人,下痢をしやすい人,手が不自由な人などの場合には適さない。一度洗腸を始めると長い時間がかかるため,家庭内に洗腸を行う場所を確保しなければならないなどの問題もある。 〈袋吊り下げ法〉は,パウチと呼ばれる専用の袋をストーマの周囲に貼り付けて,自然に排泄される大便を受け止める方法。自分で処理ができない場合には,この方法が用いられる。袋が直接肌に触れるため,湿疹(かぶれ)を起こしたり,排泄物が袋の容量を超えてしまい,袋が破裂して中身が飛び散ってしまったりという欠点もある。最近では,さまざまな種類のパウチが開発され,価格も性能も自分にあったものを選択できるようになっている。 大学病院などでは,ストーマ専門の外来(ストーマ外来)を設置する病院も出てきている。そこには,ET(enterostomal therapist)と呼ばれるストーマ療法士(看護婦)がおり,ストーマをもつ人の日常生活におけるケア,仕事や社会活動などの社会復帰上の問題や精神的な問題などについての専門的な助言や指導を行っている。 ストーマをもつ人〈オストメイト〉は日本全国で約10万人に上るともいわれ,患者の会などの活動も盛んに行われている。
→関連項目生体小腸移植

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