日本大百科全書(ニッポニカ) 「スルファニル酸」の意味・わかりやすい解説
スルファニル酸
するふぁにるさん
sulfanilic acid
芳香族アミノスルホン酸の一種で、p(パラ)-アミノベンゼンスルホン酸ともいう。水には溶けるが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルには溶けない。この化合物はアニリン硫酸塩をおよそ200℃で加熱すると得られ、種々のアゾ染料の合成中間体として広く使われている。
この化合物のアミド誘導体であるp-アミノベンゼンスルホンアミドH2N-C6H4-SO2NH2は、別名スルファミンとよばれ、サルファ剤の一種である。抗菌剤として医薬に用いられていたが、副作用や有効血中濃度が低いなどの欠点があるので、現在ではこの化合物自体はほとんど使われていない。かわりに、この化合物のスルホンアミドのNH2基を置換した誘導体H2N-C6H4-SO2NHRが医薬として用いられている。これらの一連の医薬となるスルホンアミド類をサルファ剤とよぶ。とくに、置換基Rとして5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-5-イル基をもつスルファメチゾール、5-メチル-3-オキサゾリル基をもつスルファメトキサゾールなどが代表的なサルファ剤で、抗菌剤として感染症やそれに伴う炎症などの治療に広く用いられている( )。
[廣田 穰]