日本大百科全書(ニッポニカ) 「スーラージュ」の意味・わかりやすい解説
スーラージュ
すーらーじゅ
Pierre Soulages
(1919―2022)
フランスの画家。南フランス、ロデスに生まれる。彼はほとんど独学の画家であり、第二次世界大戦中、兵役につき、さらに農業に従事したのち、パリに定住した。1946年にようやく本格的に絵画に取り組むようになる。1949年、パリのリディア・コンティ画廊で最初の個展を開催。以来、純粋抽象の中心的な画家の一人として急速にその名声を獲得していった。サロン・ド・メのほか各国の国際展に出品、1953年第2回サン・パウロ・ビエンナーレで受賞。彼の絵画は大胆で力強い黒の筆触を特徴としており、幅広のカリグラフィックな線と限定されたパレットで堂々とした記念碑的建造物を構築する。「手段が限定されればされるほど、表現は強くなる」と彼はいう。スーラージュ芸術のもつプリミティブでモニュメンタルな力強さや厳格な節度は、生まれ故郷ではぐくんだ、先史時代やロマネスク時代の遺跡や芸術への愛好と無縁ではないだろう。また、その筆触には東洋の書との類似性を感じさせるものもある。絵画以外に、ブロンズの彫刻やエッチングを制作し、舞台デザインも手がける。1975年、パリ市芸術大賞、1986年にはフランス絵画大賞を受賞した。また、1992年(平成4)には高松宮殿下記念世界文化賞絵画部門で受賞し、来日した。2001年、サンクト・ペテルブルグのエルミタージュ美術館で回顧展「スーラージュ・黒の光」を開催。
[大森達次]
『P・スーラージュ、吉川逸治訳「わが創作の秘密」(『芸術新潮』99号所収・1958・新潮社)』▽『辻佐保子訳「スーラージュがルーヴルで語る――ピエール・シュネーデルとの対話」(『芸術新潮』161号所収・1963・新潮社)』▽『瀬木慎一訳「絵画と世界」(『抽象芸術論』所収・1968・昭森社)』▽『南川三治郎著『アトリエの巨匠・100人』(1994・新潮社)』▽『James Johnson SweeneySoulages ; paintings since 1963(1968, M. Knoedler, New York)』▽『Bernard CeyssonSoulages(1979, Flammarion, Paris)』▽『Nathalie ReymondSoulages ; la lumière et l'espace(1999, Adam Biro, Paris)』