セウォル号沈没事件(読み)セウォルごうちんぼつじけん

百科事典マイペディア 「セウォル号沈没事件」の意味・わかりやすい解説

セウォル号沈没事件【セウォルごうちんぼつじけん】

2014年4月16日に韓国の旅客船フェリー・セウォル号(清海鎮海運)が珍島沖海上で転覆・沈没する事故が発生。事故が発生したセウォル号には,修学旅行中の安山市の檀園高等学校2年生生徒325人と引率教員14人の他,一般客108人,乗務員29人の計476名が乗船し,車両150台余りが積載されていたが,多数の高校生を含む死者・行方不明者を出す大惨事となった(2014年10月現在死者295人,行方不明者9名)。さまざまなビデオ映像や携帯電話記録から,生存している高校生を乗せたまま沈没していく船の光景船長・乗務員が乗客を見捨てて救出される様子,韓国・海洋警察の救出作業の無策・無能ぶりといった事故の模様が国内はもとより全世界に報道され,大きな衝撃を与えることになった。事故直後から政府の対応に批判が噴出,鄭ホン原首相は辞任を表明したが事態は収拾されず,朴槿恵政権を揺るがす大問題に発展し,朴槿恵大統領の支持率は一気に降下した。2014年5月19日朴大統領は国民に謝罪し,海洋警察の解体と新たに強力な災害対策機関の設置を約束したが,国民の批判は収まらず政権にとっても大打撃となった。検察警察合同捜査本部の捜査を踏まえ,検察はイ・ジュンソク船長を殺人罪で起訴運航担当乗組員14人についても3人は乗客が死亡すると知りながら救助活動をしなかったとして殺人罪に問い,その他は業務上過失船舶埋没,救護措置を取らず脱出した逃走船舶罪などで起訴した。10月27日光州地裁での公判で,検察側は殺人罪などに問われた船長に対し死刑を求刑。他の14人にも無期懲役などを求刑した。〈清海鎮海運が船を無理に増・改築し,過剰積載状態で出港した後,船員の運航の過失で沈没した。救助に行った木浦海洋警察署の問題ある対処,救護会社選定過程での不法行為で死亡者が増えた〉としている。11月,光州地裁は船長のイ・ジュンソク被告ら運航担当乗組員15人全員に実刑判決を言い渡した。死刑が求刑されていたイ・ジュンソク被告に対しては殺人罪については無罪とし,遺棄致死罪などで法定最高刑の懲役36年としたが,検察は判決を不服として控訴する方針。事故の真相究明をめざす特別法をめぐって,韓国社会は分裂したといわれるほど深い傷を残した。〈聖域なき調査〉を求める遺族側は調査委員会の組織や運営方法で譲らず,与野党の協議は難航した。事故の真相究明をめざす特別法は11月に成立したものの,遺族らの姿勢は依然強硬なままである。
→関連項目大韓民国

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