絹糸に約25% 含有され,繊維を形成するフィブロインの外側を覆っている天然タンパク質.一般に,絹糸の精錬工程で熱水に溶解することにより除去される.分子量が1.6~3.3 × 105 の4種類のタンパク質が主要成分である.構成するアミノ酸はセリンが約35% ともっとも多く,ついでグリシンとアスパラギン酸が約15% ずつ含有される.絹糸より除去されたセリシンは廃棄されることが多かったが,抗酸化作用,保湿機能,紫外線吸収機能などを有することにより,近年,化粧品などに利用されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
フィブロインとともに繭の繊維を構成するタンパク質。絹膠(けんこう)ともいい、硬タンパク質の一つ。クラマーE. Cramerが1865年繭の繊維から分離し、絹のラテン語sercumおよびギリシア語serikonにちなんで命名した。カイコの中部糸腺(せん)で合成される。アミノ酸組成はセリンが多いのが特徴である。熱湯に溶け、冷えるとゲル化する。繭の繊維は、2本のフィブロインが三層のセリシンに覆われてできており、繭のタンパク質成分は、70%のフィブロインと30%のセリシンとからなる。
[降旗千恵]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また生産国により,日本糸,中国糸,韓国糸などに分類される。
[構造および性質]
繭糸は近似三角形の断面をもつ2本のフィブロイン繊維をセリシンが被覆する形状をなす。繭糸の主成分はセリシン(20~30%),フィブロイン(70~80%)でほぼ95%以上を占め,ほかに蠟,炭水化物などの二次成分を含む。…
…腺は前・中・後の3部に区分され,前部糸腺の先端は合一して,下唇先端にある吐糸口につながる。絹糸を構成するタンパク質であるフィブロインは後部糸腺で分泌されて中部糸腺で蓄積され,その外側を覆うセリシンは中部糸腺で合成・分泌される。これらのタンパク質はゲル状の液状絹として腺内に蓄えられ,分子摩擦の一種であるずり応力と延伸の際の張力によって吐糸口で固体化して絹糸となる。…
…(4)煮繭 繭は繭糸相互が膠着(こうちやく)して繭層を構成している。煮繭は繭糸相互を膠着する役割をしているセリシンを熱水,蒸気あるいは化学薬剤などにより,膨潤・軟和させ,繭を繰糸する際,膠着抵抗により繭糸が切断したり,もつれたまま繰られて,生糸にふしが生じないためにする処理をいう。繭層セリシンを膨潤・軟和するには,まず繭層を湿潤させ,次いで膨潤させる。…
※「セリシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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