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ゼロ・エミッション ぜろえみっしょんzero‐emission

知恵蔵の解説

ゼロ・エミッション

提唱者G.パウリによれば、「何も無駄にしない。すべての廃棄物付加価値を見いだして利用し尽くす」技術体系や経営手段を意味する理念。残余物はその産業の活動内で再利用してもいいし、付加価値のあるインプットとして他産業に用いてもよい。すべての原材料を完全に利用した時に、加工産業は初めて潜在能力を最大限に発揮することになるとの考えがある。廃棄物が少ない生産方法が採用され、廃棄物が生じた場合には、リサイクル等の活用方策が考えられなければならない。生産方法の革新や産業間連携を強化することで、廃棄物の排出をゼロにしようという概念。個々の企業のレベルから1つの地域や工業団地のレベルまで、実験的な試みが続けられているが、1つの企業でのゼロ・エミッションを、経済全体での廃棄物の発生抑制に結びつける必要がある。

(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ゼロ・エミッション
ぜろえみっしょん
zero emission

1994年に国連大学が提唱した「ゼロ・エミッション研究構想」のなかで示された概念。ゼロ・エミッションは「(廃棄物の)排出がないこと」を意味するが、国連大学によって提唱された概念では、廃棄物として捨てられているものを有効活用することによって廃棄物の発生量を減らし、燃やしたり埋め立てたりすることをゼロに近づけることをさす。ある一定のまとまりをもつ産業を産業クラスターとし、産業クラスター間でネットワークを形成し廃棄物を相互利用することで資源を最大限に活用し、社会全体として資源消費と廃棄物発生を低減させようという考え方。この場合の産業クラスターとは、特定分野において共通する技術やノウハウによりつながった企業、専門性の高いサプライヤー(商品の製造・供給者)、サービス提供者が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力する産業の構成単位である。狭義には、産業活動から出る廃棄物のうち埋立て処分する量(最終処分量)をゼロにすることをさす。
 具体的な方法としては、個別の産業クラスター内では、生産工程での歩留りを上げたり廃棄物の分別を徹底すること、産業クラスター間では、各クラスターの廃棄物の量と質に関する情報を共有し、できるだけ環境負荷の少ない手法を選択して有効活用を行うこと等があげられる。日本国内では、ISO14001などの環境マネジメントシステムの普及や埋立て処分費用の高騰に伴い、事業所や工場のゼロ・エミッションに取り組む企業が増加している。政府としては、ゼロ・エミッション構想を基本とした環境調和型のまちづくりを推進するため、経済産業省と環境省が連携して、1997年(平成9)より「エコタウン事業」を推進している。エコタウンでは、さまざまなリサイクル工場が立地し、立地企業は集積効果を生かして相互に連携して廃棄物の受け入れやリサイクルの委託を行う。具体的事例としては、OA機器のリサイクル工場で処理されるパソコン・モニターを家電リサイクル工場のテレビ解体ラインで処理したり、食用油のリサイクル工場で作られるバイオディーゼル燃料(BDF)を、ほかの工場の機械の燃料として使用したりするなどして、ゼロ・エミッションの推進と効率化を図っている。
 また深刻なごみ問題は、そもそもごみがなければ起こらないことから、ごみ問題の根本を絶つ考えとして「ごみゼロ」といった同様の考え方もある。循環型社会形成を推進する3R(リデュースReduce、リユースReuse、リサイクルRecycle)のリデュース(発生抑制)や廃棄物減量化とも通ずる。[田中 勝]
『三橋規宏著『ゼロエミッションのガイドライン――廃棄物のない経済社会を求めて(国連大学ゼロエミッションフォーラムブックレット)』(2001・海象社) ▽三橋規宏著『ゼロエミッションと日本経済』(岩波新書)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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