ゼロエミッション(読み)ぜろえみっしょん(その他表記)zero emission

翻訳|zero emission

デジタル大辞泉 「ゼロエミッション」の意味・読み・例文・類語

ゼロ‐エミッション(zero emission)

廃棄物を出さない製造技術を開発する計画。ある企業・産業で排出される廃棄物を、別の企業・産業の原料として使うなどして、トータルで廃棄物をゼロにしようというもの。国連大学が1995年に提唱した。→ゼロ‐ウェイスト(zero waste)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゼロエミッション」の意味・わかりやすい解説

ゼロ・エミッション
ぜろえみっしょん
zero emission

1994年に国連大学が提唱した「ゼロ・エミッション研究構想」のなかで示された概念。ゼロ・エミッションは「(廃棄物の)排出がないこと」を意味するが、国連大学によって提唱された概念では、廃棄物として捨てられているものを有効活用することによって廃棄物の発生量を減らし、燃やしたり埋め立てたりすることをゼロに近づけることをさす。ある一定のまとまりをもつ産業を産業クラスターとし、産業クラスター間でネットワークを形成し廃棄物を相互利用することで資源を最大限に活用し、社会全体として資源消費と廃棄物発生を低減させようという考え方。この場合の産業クラスターとは、特定分野において共通する技術やノウハウによりつながった企業、専門性の高いサプライヤー(商品の製造・供給者)、サービス提供者が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力する産業の構成単位である。狭義には、産業活動から出る廃棄物のうち埋立て処分する量(最終処分量)をゼロにすることをさす。

 具体的な方法としては、個別の産業クラスター内では、生産工程での歩留りを上げたり廃棄物の分別を徹底すること、産業クラスター間では、各クラスターの廃棄物の量と質に関する情報を共有し、できるだけ環境負荷の少ない手法を選択して有効活用を行うこと等があげられる。日本国内では、ISO14001などの環境マネジメントシステムの普及や埋立て処分費用の高騰に伴い、事業所や工場のゼロ・エミッションに取り組む企業が増加している。政府としては、ゼロ・エミッション構想を基本とした環境調和型のまちづくりを推進するため、経済産業省と環境省が連携して、1997年(平成9)より「エコタウン事業」を推進している。エコタウンでは、さまざまなリサイクル工場が立地し、立地企業は集積効果を生かして相互に連携して廃棄物の受け入れやリサイクルの委託を行う。具体的事例としては、OA機器のリサイクル工場で処理されるパソコン・モニターを家電リサイクル工場のテレビ解体ラインで処理したり、食用油のリサイクル工場で作られるバイオディーゼル燃料BDF)を、ほかの工場の機械の燃料として使用したりするなどして、ゼロ・エミッションの推進と効率化を図っている。

 また深刻なごみ問題は、そもそもごみがなければ起こらないことから、ごみ問題の根本を絶つ考えとして「ごみゼロ」といった同様の考え方もある。循環型社会形成を推進する3R(リデュースReduce、リユースReuse、リサイクルRecycle)のリデュース(発生抑制)や廃棄物減量化とも通ずる。

[田中 勝]

『三橋規宏著『ゼロエミッションのガイドライン――廃棄物のない経済社会を求めて(国連大学ゼロエミッションフォーラムブックレット)』(2001・海象社)』『三橋規宏著『ゼロエミッションと日本経済』(岩波新書)』

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知恵蔵 「ゼロエミッション」の解説

ゼロ・エミッション

提唱者G.パウリによれば、「何も無駄にしない。すべての廃棄物に付加価値を見いだして利用し尽くす」技術体系や経営手段を意味する理念。残余物はその産業の活動内で再利用してもいいし、付加価値のあるインプットとして他産業に用いてもよい。すべての原材料を完全に利用した時に、加工産業は初めて潜在能力を最大限に発揮することになるとの考えがある。廃棄物が少ない生産方法が採用され、廃棄物が生じた場合には、リサイクル等の活用方策が考えられなければならない。生産方法の革新や産業間連携を強化することで、廃棄物の排出をゼロにしようという概念。個々の企業のレベルから1つの地域や工業団地のレベルまで、実験的な試みが続けられているが、1つの企業でのゼロ・エミッションを、経済全体での廃棄物の発生抑制に結びつける必要がある。

(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼロエミッション」の意味・わかりやすい解説

ゼロエミッション
Zero Emission

廃棄物をゼロにする試み。国連大学が推進するプロジェクトベースにして,産業社会における廃棄物の完全再利用システムの実現を目指す。国連大学はビールの醸造かすを利用して魚類の養殖や藻類栽培を行なう,「炭酸ガスや廃棄物を出さないビール醸造」などをテーマに取り上げ,1995年には初の世界会議を東京で開催した。日本でも 1997年,環境事業団がゼロエミッション企業団地の建設に着手したほか,通商産業省も環境調和型の地域システムの構築を目指したモデル事業エコタウンプランを創設した。これに合わせて川崎市北九州市などいくつかの自治体でゼロエミッション工業団地計画が進められているほか,ゼロエミッション工場づくりを検討中の大企業も目立ってきた。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ゼロエミッション」の解説

ゼロエミッション

生産や廃棄、消費に伴って発生する破棄物をゼロにすることを目的とする運動。国連大学が最初に提唱。日本でもダイオキシン問題が引き金となり、広く一般に注目されるようになった。生分解素材などを使用した環境に配慮したエコプロダクトなどは、その意図に沿った製品と言える。もはや全世界的な基準となりつつあるISOなどを中心に、各国の環境基準は高まる一方で、企業には環境に配慮した積極的な取り組みが求められている。

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化学辞典 第2版 「ゼロエミッション」の解説

ゼロエミッション
ゼロエミッション
zero emission

人間の社会活動や生産活動に伴い排出されてきた廃棄物をゼロにして,循環型社会を構築しようとする構想をいう.固形廃棄物,排水,排気,排熱などの有効利用を目的とし,20世紀の大量生産・大量消費社会から脱却して,資源循環型社会をめざすものである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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