家電リサイクル法(読み)かでんりさいくるほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「家電リサイクル法」の意味・わかりやすい解説

家電リサイクル法
かでんりさいくるほう

家電製品のリサイクル(再商品化)をメーカーに義務づけ、廃家電製品の再資源化を通して環境を保全することを目的として1998年(平成10)6月に公布された法律の通称。正式名称は「特定家庭用機器再商品化法」。2001年4月1日に施行され、その後対象機器の追加と再商品化等の基準を引き上げるための政令が2008年12月に公布、2009年4月に施行された。

 1998年当時、家庭から排出される廃家電製品は年間60万トンであり、そのうち約8割が小売業者、約2割が直接市町村によって回収されていた。しかし、実際の処理は、産廃処理業者が約60%、自治体が約40%を実施していた。廃家電製品の一部は破砕して金属分の回収が行われている場合があるものの、そのほとんどは埋立てられていたのである。この法律は、廃家電製品の再資源化をより高めようとするものである。

 法律では、対象品目のテレビ、冷蔵庫冷凍庫洗濯機・衣類乾燥機、エアコンの4品目について、家電メーカーおよび小売業者に義務を課し、金属、ガラス等をリサイクルする仕組みを定めている。具体的な役割分担は、製造業者および輸入業者(「製造業者等」と定義される)に、廃家電製品の引き取りと再商品化を義務づけており、小売業者には引き取りと引き取った廃家電製品を製造業者等に引き渡すことが義務づけられた。一方消費者は、廃家電製品の再商品化が確実に実施されるよう小売業者等に適切に引き渡し、収集・再商品化に関する料金を小売業者等に直接支払う形で負担するよう求められている。従来、廃家電製品を処理してきた市町村の役割は上述したシステムを補完する位置づけとなっており、消費者からの引き取り、製造業者等への引き渡し、あるいは自らリサイクルすることが可能である。

 なお、製造業者は引き取った対象機器については施行令で定められた基準以上の再商品化等を達成することが必要とされている。再商品化等の基準は重量比でエアコン70%以上、ブラウン管式テレビ55%以上、液晶プラズマ式テレビ50%以上、冷蔵庫・冷凍庫60%以上、洗濯機・衣類乾燥機65%以上となっている。なお、「再商品化等」とは、部品または原材料として自ら利用すること、部品または原材料として有償または無償で譲渡できる状態にすること(マテリアルリサイクル)と、焼却時の熱エネルギーを利用する熱回収をさすが、数値基準はマテリアルリサイクルのみで達成する必要がある。また家庭用エアコンと冷蔵庫においては含まれるフロンを回収、破壊処理しなければならない。このような背景のなかで、大手家電メーカーは使用済み家電製品のリサイクル工場を設置し、操業を行っている。財団法人家電製品協会の報告によると、2008年度の家電リサイクル実績は全国48か所の再商品化施設における使用済み家電4品目の処理台数が約1273万台で、再商品化率はエアコン89%、ブラウン管式テレビ89%、冷蔵庫・冷凍庫74%、洗濯機84%となり、政令に定められた基準値を上回る数値を達成している。なお、対象商品として2004年4月から冷凍庫が、2009年4月から液晶・プラズマ式テレビと衣類乾燥機が追加となった。

[田中 勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「家電リサイクル法」の意味・わかりやすい解説

家電リサイクル法
かでんリサイクルほう

平成10年法律97号。家庭電気製品のリサイクルについて定めた法律。正式名称「特定家庭用機器再商品化法」。2001年4月施行。対象製品は,エアコンディショナ(ユニット形),テレビジョンブラウン管,液晶・プラズマ),冷蔵庫および冷凍庫,洗濯機および衣類乾燥機の 4品目。原則として販売店が,みずからが過去に販売した製品,および買い換え時に不要となった同種類の製品を引き取り,家電メーカーがリサイクルすることを義務づけている。家電製品には銅やアルミニウム,鉄などリサイクル可能な金属が含まれている一方,鉛やフロンガスなど,正しく処理しなければ環境汚染につながる物質も使われているため,法律ではこれらの物質を選別して回収する技術の開発と,リサイクル施設の整備を家電メーカーに義務づけた。家電メーカーは法律に基づき全国にリサイクル工場を設置している。リサイクルに必要な費用は消費者が負担する。廃棄する際は,購入先の販売店にリサイクル料金と運送費を支払う。リサイクル料金は家電メーカーごとに決められており,運送費は販売店が自由に決めることができる。また,郵便局で家電リサイクル券を購入し,近くの販売店などに引き取ってもらうこともできる。

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