タンキリマメ(読み)たんきりまめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンキリマメ」の意味・わかりやすい解説

タンキリマメ
たんきりまめ / 痰切豆
[学] Rhynchosia volubilis Lour.

マメ科(APG分類:マメ科)のつる性多年草。日本(関東地方以西)のほか朝鮮半島、中国、フィリピン山野に分布する。茎はつる状となり、全体に黄褐色の短い軟毛を密生する。葉は互生し、長い柄のある3出複葉となる。小葉は長さ3~5センチメートル、幅2.5~4センチメートルの倒卵形で厚く、下面に腺点(せんてん)があり、短い小柄をもつ。7~9月、葉腋(ようえき)に長さ2~4センチメートルの総状花序を出し、長さ8~10ミリメートルの黄色の蝶形花(ちょうけいか)を開く。旗(き)弁は幅広くて直立し、翼(よく)弁と舟(ふな)弁は細長い。萼(がく)の先端は5裂するが、下側の裂片がとくに長く、毛と腺点をもつ。秋に豆果は赤く熟し(長さ1.5センチメートル、幅1センチメートル)、中に2個の黒色種子をもつ。

[長沢元夫 2019年10月18日]

薬用

日本では、民間的に1日15~30グラムの種子を煎(せん)じて咳(せき)止めに用いる。タンキリマメの名は、こうした療法で痰(たん)の切れがよくなることに由来する。タンキリマメを漢名では鹿藿(ろっかく)、鹿豆(ろくず)、野緑豆(やりょくず)といい、葉を凉血(りょうけつ)、解毒鎮痛剤として頭痛腹痛腰痛産褥(さんじょく)熱、るいれき、腫(は)れ物などの治療に用いる。また、根は小児の疳積(かんしゃく)のほか、月経痛、るいれきなどの治療に用いる。

[長沢元夫 2019年10月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「タンキリマメ」の意味・わかりやすい解説

タンキリマメ
Rhynchosia volubilis Lour.

海岸や平地から低山地の草原,林縁などでみられるつる性のマメ科の多年草。種子,果実,葉を薬用にし,痰を止めたことから,痰切豆と呼ばれたといわれる。葉の裏面や萼に,黄褐色の腺点が多数ある。茎には下向きの短い黄褐色毛が密生している。葉は3小葉をもつ複葉で,互生する。頂小葉は倒卵形で長さは3~6cm,幅は2~5cmあり,先は円く,裏面には腺点と共に密に黄褐色の毛がある。花期は7~10月。短い花穂に5~20個の蝶形花をつける。花は黄色で長さ8~10mm。果実は扁平な楕円形の豆果で,2個の種子を入れており,長さ12~13mm,幅約8mm,熟すと紅色となる。種子は楕円形,黒色で光沢がある。日本では千葉県以西,琉球諸島までみられ,朝鮮,中国,フィリピンに分布する。

 トキリマメR.acuminatifolia Makinoはタンキリマメに似ているが,小葉の先がとがっている。トキリはこのとがり(とぎり)に由来するともいわれている。
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