ダグラス窩膿瘍(読み)ダグラスかのうよう(その他表記)Douglas' abscess

改訂新版 世界大百科事典 「ダグラス窩膿瘍」の意味・わかりやすい解説

ダグラス窩膿瘍 (ダグラスかのうよう)
Douglas' abscess

ダグラス窩に膿のたまった状態。ダグラス窩とは,解剖学的には女子の直腸子宮の間の腹膜腔の部分(直腸子宮窩)をいうが,臨床的には男子の直腸膀胱窩(直腸と膀胱の間の腹膜腔)もダグラス窩と呼んでいる。化膿性腹膜炎のあと,または急性虫垂炎や子宮付属器炎などのときにダグラス窩に膿瘍の形成されることがある。これがダグラス窩膿瘍であるが,はっきりした腹膜炎がなくても,胃腸,胆道膵臓の病気で大きな手術をしたあとで続発することもある。膿が大量にたまると,発熱鼓腸下腹部痛,しぶり腹,下痢,肛門括約筋弛緩,膀胱障害などの症状がみられる。診断は直腸指診あるいは腟内指診で,直腸内あるいは腟内に膨隆した抵抗を触れ,圧痛を認める。治療は肛門あるいは腟から切開して排膿する。ときには自然に破れて直腸,腟に排膿することもある。
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家庭医学館 「ダグラス窩膿瘍」の解説

だぐらすかのうよう【ダグラス窩膿瘍 Douglas Abscess】

[どんな病気か]
 男性は直腸(ちょくちょう)と膀胱(ぼうこう)の間、女性は直腸と子宮の間にあるくぼみをダグラス窩といい、腹腔(ふくくう)の最下部に位置します。
 ここに膿(うみ)がたまるのがダグラス窩膿瘍で、まれに腹膜炎(ふくまくえん)の合併症としておこることがあります。
[症状]
 便意があるのに排便をみないしぶり腹、尿意があるのに尿の出ないしぶり膀胱、排尿痛などが現われます。
 女性は、おりもの(帯下(たいげ))の増加、不正性器出血をみることもあります。
 治療としては、直腸を切開し、膿を排出させる手術が必要になります。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダグラス窩膿瘍」の意味・わかりやすい解説

ダグラス窩膿瘍
ダグラスかのうよう
Douglas' abscess

ダグラス窩に膿がたまって膿瘍を形成したもの。ダグラス窩とは腹腔の最底位の部分で,男性では直腸と膀胱の間,女性では直腸と子宮の間をいう。スコットランド産科医 J.ダグラス (1765~1742) にちなむ名称。ダグラス窩は腹腔の最底部なので,腹腔内の膿がたまりやすい。虫垂炎と女性性器の炎症がおもな原因になる。症状は下腹部の不快感,排便時の下腹部痛,粘液の混った下痢便,しぶり腹,頻尿,排尿痛,帯下,性器出血など。自然に膿が吸収されたり,直腸などに出てなおることもあるが,腸管や卵管の癒着,子宮の位置異常などの後遺症を残す。一般に化学療法の効果が少く,直腸の前壁や腟の後壁を切開して排膿する必要がある。

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