イギリスの獣医、発明家、実業家。空気入りゴムタイヤの成功で有名。アイルランドのベルファストで獣医を開業中、ウシの鼓腸症からヒントを得て、空気で膨らましたゴム袋をじょうぶな帆布で包み、自転車の車輪に巻いてみた。動機は、彼の子供が当時の丸ゴムタイヤの自転車で、しばしば石につまずいてけがをするのを見てのことであった。乗りやすさとスピードを出せることがわかったので、これを空気入りタイヤとして特許をとった(1888)。1889年にデュクロWilliam Harvey du Cros(1846―1918)と共同して、空気入りタイヤ製造会社を設立した。事業は急速に発展し、さらに原料の生ゴムを求めてマレーに進出し、そこで大規模なゴム園事業を行った。空気入りタイヤを自動車に初めて利用したのは、フランスのミシュランAndré Michelin(1853―1931)で、彼が自動車競走に勝利して以降の普及には目覚ましいものがあった。
[川又淳司]
イギリスの発明家,企業家。エジンバラのアービンズ・アカデミーを卒業(1859),初めエジンバラ,続いてベルファストで獣医を開業していた。空気タイヤの原理はすでに1845年R.W.トムソンが特許を得ていたが,ダンロップはこれを知らずに,息子の三輪車を改良することから87年固型ゴムに代えて空気入りゴムタイヤを考案し,翌年特許を得た。ダンロップのタイヤは,ゴム製の内部チューブをキャンバス製ジャケットで包み,さらに外部を厚い輪底のゴムで保護したもので,後には交換可能の仕様に改善,95年ころからは自動車にも用いられるようになった。89年に企業化。ダンロップ・ラバー会社は,後には130以上の関連企業を擁し,マレーシアやナイジェリアにゴム園を経営するなど,ヨーロッパ最大のタイヤメーカーとなったが,彼自身は自分の発明から巨利を得ることはできなかった。
執筆者:木本 忠昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(2015-6-8)
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…空気を入れたゴムチューブを皮革でおおったもので,すぐにパンクしてしまい実用には至らなかった。その後30年以上もこのアイディアは埋もれていたが,87年アイルランドの獣医J.B.ダンロップはゴムを使った空気入りの自転車用タイヤを考案した。息子の自転車を乗りやすいものにしようと考えたことがきっかけで,また治療をした牛の腹部にガスが充満していたのにヒントを得たと伝えられている。…
…ダンロップの名前で知られるイギリスのタイヤ・メーカー,ダンロップDunlop Ltd.やスポーツ用品の子会社などをもつ持株会社。本社ロンドン。…
※「ダンロップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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