包み(読み)ツツミ

デジタル大辞泉 「包み」の意味・読み・例文・類語

つつみ【包み】

[名]
紙や布などで包むこと。また、そのもの。「包みをほどく」「小物をまとめて包みにする」
物を包むのに使う物。風呂敷の類。
「よき―、袋などに、きぬども包みて」〈・四六〉
[接尾]助数詞。包んであるものを数えるのに用いる。「薬を毎食後一包みずつ飲む」
[下接語](づつみ)上包み紙包み香包み茣座ござ包み小包みこも包み根包み袱紗ふくさ包み・風呂敷包み・わら包み
[類語]上包み覆いカバー被覆包装外装荷造り荷拵えパッキング梱包パッケージパックラッピング

ぐるみ【包み】

[接尾]《動詞「くる(包)む」の連用形から》名詞に付いて、そのものを含んですべて、そのものをひっくるめて全部などの意を表す。ぐるめ。「家族包み」「身包み

くるみ【包み】

くるむこと。また、くるんであるもの。
赤ん坊を抱くとき、着衣の上からくるんで防寒・保温などのために用いるもの。多くはかいまきに似て、そでがない。おくるみ。くるみぶとん。

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精選版 日本国語大辞典 「包み」の意味・読み・例文・類語

つつみ【包・裹・慎】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「つつむ(包)」の連用形の名詞化 )
  2. [ 一 ] 物を包むこと。また、物を包むもの。
    1. 物全体を紙や布などでおおい囲むこと。また、その物。包んだものを数えるのにも用いる。
      1. [初出の実例]「俛して道の頭(ほとり)を視れば、遺したる裹(ツツミ)の飯有り。〈興福寺本訓釈 裹 津々三〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
      2. 「岸上に一人有るを見る。手に小き幞(ツツミ)をもてり」(出典:石山寺本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 物を包むのに用いるもの。今の風呂敷などの類。昔は、裏をつけ、あわせのようにしたものを用いた。
      1. [初出の実例]「若(ツツミ)に盛(い)れよ」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    3. 鍍金(めっき)すること。また、そのもの。
      1. [初出の実例]「天晴の御鐔又類なき御道具申上べき所なし、然れ共ケ程のお道具つつみにいたし候は何共合点まいらぬ」(出典:浮世草子・本朝諸士百家記(1709)一〇)
  3. [ 二 ] ( 慎 ) 感情や表情をおさえること。遠慮すること。はばかること。つつしみ。気がね。
    1. [初出の実例]「若き法師ばらの、足駄といふ物をはきて、いささかつつみもなく、下りのぼるとて」(出典:枕草子(10C終)一二〇)

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改訂新版 世界大百科事典 「包み」の意味・わかりやすい解説

包み (つつみ)

〈包む〉という語は〈苞(つと)〉と語源を同じくするが,〈苞〉とはわらなどを束ねてその両端を縛り,中間部で物をくるむもの(藁苞(わらづと))であり,後には贈物や土産品の意味(家苞(いえづと))にも使われるようになった。また心理的方面においては〈包む〉は〈慎しむ〉に通じて〈隠す〉〈秘める〉〈はばかる〉といった意味合いを含み,ことに儀礼的局面におけるさまざまな〈包み〉の技法の心理的背景となってきた。

かつては食を得ることが人間にとって最優先の仕事であり,食物を採集・運搬・保存するために〈包み〉はまず必要な方法であった。各文化はそこで得られる材料を用いた包み方をそれぞれもっているが,その方法の多様,洗練という点で,日本の〈包み〉文化は独自の性格をもっている。日本の先史時代における包みの材料としては,芋,ササ,ホオ,カシワ,フキ,カキなどの葉,竹の皮,ハランなどがかっこうのものであったらしい。神への供膳用の食器として葉椀(くぼて)(カシワの葉を並べて,竹ひごでとじたもの)が《延喜式》に見える。また食料の運搬と保存には植物の実の殻(ひょうたんなど),貝殻,獣皮,魚皮,織布,すのこなども利用されたことが遺跡出土品から認められる。

 正倉院の御物や法隆寺の献納品のうちに確認することのできる〈包み〉には,各種のイのむしろ,伎楽面を包んだ大ぶろしき,儀式用の針を包んだ緑麻紙製の包み,鉛丹を包んだ三重の紙袋,香料を入れる袋として羅または白の細布を重ねた巾着(きんちやく)型のもの,帯を包んだ袷(あわせ)仕立てのふろしきに表裏の両端に紐を着けてあるものなどがある。このほかに蜜蠟(薬用)を包んだ白麻の袋,鍾乳石(健胃強精剤)を包んだ白絹の包み切れなども残されている。《源氏物語》にみられるところでは,目上の人に物を贈る場合にはに入れたり,扇にのせたり,梅の枝に結びつけたりしているが,これらの方法も広義の〈包み〉に含めてよいだろう。

 鎌倉から室町時代になると武家故実が確立され,武技,調度,服飾をはじめとして,元服,婚礼,出産などの儀礼が定められ,とくに幕府の礼法については伊勢,小笠原の両氏があずかるようになった。この時代には,《雅亮(まさすけ)(満佐須計)装束抄》《宗五大艸紙》《今川大双紙》などの故実書に〈包み〉に関する記述がみられる。《雅亮装束抄》は平安末期の人である源雅亮が著した公家故実書だが,〈包み〉の技法についての詳細な記述を含み,文(ふみ)の包み方,名香の包み方,童(わらべ)の装束,束帯の包み方などが記されている。ただし,そこで用いられるものは紙ではなく,すべて布地である点は注目すべきであろう。《今川大双紙》は室町時代の初期に今川貞世(さだよ)(了俊(りようしゆん))が著した武家故実の書であり,たとえば金(かね)の包み方として,所柄や季節に応じた包み方,材料およびその色合いの選び方などについて述べている。

 室町時代までは,〈包み〉の礼法は将軍家を中心とする上流階層にしか行われなかったが,江戸時代中期になると和紙が全国各地で大量に生産されるようになり,武士に限らず一般庶民の間でも広く用いられるようになった。先に述べた伊勢氏の中興の祖といわれる伊勢貞丈(さだたけ)(安斎)は江戸中期,宝暦年間に《包結図説(ほうけつずせつ)》を著したが,これは〈包の部〉と〈結の部〉の2部からなり,その前者において,包む中味や用途に従った各種の礼法が定められた。また内容物の端を包紙の上か下から少し出して,なかの物をわかるようにしたり,小さい物を包み込んでしまう場合には包紙の上に品物の名前と数量とを書くべく示されている。これら紙を用いた儀礼的〈包み〉技法は,お祓いの際の形代(かたしろ)や雛祭の紙雛につながる系譜と考えられるが,これらは和紙独特の折りの美に,祈禱・占いなどの信仰上の約束事と中国伝来の陰陽思想が加味されてできあがったものである。

 江戸幕府が鎖国政策をとってから,長崎を窓口とする交易オランダと中国だけとなったが,外国貿易によって他国の包装技術を学ぶことができたことは大きな収穫であった。当時の貿易に使われた入れ物,櫃(ひつ),,箱が中心だったが,そのうちでも重宝がられたのは俵であった。江戸時代における国内輸送用の入れ物としては,塩は俵または(ざる)で,米と炭は俵で,油,酒,味噌(みそ)は樽で,また商品の運搬には,行商人は大ぶろしきを背負い,近江商人は天秤棒をかつぎ,高野聖(こうやひじり)は笈(おい)に負うて運んだ。京都や奈良では各老舗(しにせ)が渡来した唐菓子を改良して,茶道の嗜好に適合した,いろいろの京菓子をつくったが,木の葉,竹の皮,和紙などを用いたその包み方は優雅な造形美を示している。

日常生活の中で最も日本的な包み方といえば第1にふろしき包みをあげねばならない。平安時代には〈衣つつみ〉や〈平つつみ〉という名前が古文書に見られるが,これらは衣類などを包む正方形の布をさしていた。平つつみという名前から〈ふろしき〉という名前に変わってくるのは,室町時代の風呂の流行によるものであろう。つまり入浴するときに衣服を平つつみに包んでおき,湯上がりには平つつみを開いてその上にすわって衣服を着たので,天和,貞享のころからこれを〈ふろしき〉と呼ぶようになったという。ふろしきは中に包まれるものの形状にとらわれず,これに合うように包み込んでしまうが,これは斜方向に裁った布を用いるからできるのである。日本でふろしきが発達した理由としては,日本人は手先が器用であるために包み方が上手であること,布の端の部分の結び方が巧みなことなどがあげられよう。紙や布で物を包むときや袋の中に物を収納する場合には,包み口の処置に工夫が必要で,その端や口を最後の段階で,結ぶ,たたむ,閉じる,挟む,絞るなどの手法によって始末しなくてはならず,ある程度の技術を要するものである。

 次に洋風の包み方として,百貨店などで行っている〈商品包み〉に触れてみよう。この場合には,中に入れる物品の形状の大きさに合わせた寸法の紙を用いることが必要である。箱形のものを包むときには,紙を品物に対して斜めに置く方法と,品物に直角に置いて包み始める方法とがある。丸い物,たとえば円筒形のものや半円球のものを包むときには,丸みに合わせてひだをとりながら巻いていくことが必要である。

 包むという技法は,最初のころは物を運んだり,保存するために必要な実用包みであったが,それらの役目が果たされるとやがて美を表現する包み,儀礼的な包み,風流な包みへと多様化していき,ついに今日の〈包み〉の文化をつくり上げた。
結び
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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