チェザルピーノ(読み)ちぇざるぴーの(その他表記)Andrea Cesalpino

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェザルピーノ」の意味・わかりやすい解説

チェザルピーノ
ちぇざるぴーの
Andrea Cesalpino
(1519―1603)

イタリアの医学者、植物学者。アレッツォに生まれ、ピサで医学、哲学を修め、のちピサの大学の薬学教授および植物園長となる。晩年にはローマ法王クレメンス8世の侍医を務める。植物学上の主著『植物について』全16巻(1583)では、花と果実を重視した分類体系を提唱し、後の人為分類の大成者リンネに影響を与えた。また、医学の研究では、血液は右の心臓から肺に行き、肺から左の心臓へ運ばれるとし、このプロセスに「循環」という語を用いた。そのため彼はハーベーに先だって血液の循環を発見したといわれることもあるが、この説はガレノスに反対する立場で説いたもので実験的根拠をもつものではない。

真船和夫

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改訂新版 世界大百科事典 「チェザルピーノ」の意味・わかりやすい解説

チェザルピーノ
Andrea Cesalpino
生没年:1519-1603

イタリアの医学・哲学・生物学者。アレッツォに生まれ,ピサ大学に学び,1551年に医師となった。ピサ大学の医学教授についで,植物学教授となり,植物園長を兼ねた。92年教皇クレメンス8世の侍医として招かれ,ローマの〈学府〉(現,ローマ大学)教授となる。著書《逍遥学派の諸問題》(1571),《医学の諸問題》(1593)のなかに,W.ハーベーの血液循環説の前駆となるつぎの記載がある。〈血液は心臓の収縮で,左室から大動脈肺動脈に流れ,拡張で大静脈肺静脈から右室に流れ込む。心臓から出た血液の流れは動脈から静脈に達し,心臓の弁膜は血液の逆流を防ぐ〉として,〈循環circulatio〉の語をはじめて用いた。彼はひろく植物を採集し,1520種の植物を,花や果実の形態から15綱に分類した。のちにC.リンネは,チェザルピーノを〈最初の植物分類学者〉と推賞している。主著《植物学》(1583)によって,系統植物学は応用植物学と区別される傾向をもった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェザルピーノ」の意味・わかりやすい解説

チェザルピーノ
Cesalpino, Andrea

[生]1519.6.6. アレッツォ
[没]1603.2.23. ローマ
イタリアの博物学者,医者。ピサ大学,パドバ大学に学び,32歳で医学士となる。ピサの植物園長をつとめ,ピサ大学薬物学教授 (1563) ,ローマ大学教授 (92) 。教皇クレメンス8世の侍医もつとめる。従来のテオフラストス流の分類 (木本,草本の区別が中心) や効用に基づく分類に加えて,植物の繁殖機能を重視して,分類の基準形質として果実と種子を中心に据え,花冠,幹,根の形態を考慮して 15綱に大別するという画期的な分類法を提唱した。彼の分類原理は,のちの R.モリソン,J.レイなどに受継がれ,C.リンネにも影響を与えた。主著に『植物論』 De plantis libri XVI (83) がある。

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世界大百科事典(旧版)内のチェザルピーノの言及

【本草学】より

…P.ディオスコリデスの《薬物誌De materia medica》には約600種の植物とその用法が記され,1世紀に公にされてから長いあいだ植物薬学の基準となっていた。その後,13世紀のアルベルトゥス・マグヌスの《植物論De vegetabilibus》を除けばめぼしい業績はなかったが,16世紀に至ってディオスコリデスの追加訂正の形でブルンフェルスO.Brunfels,フックスL.Fuchs,クルシウスC.de Clusiusらの植物の図解が次々と世に出たほか,16世紀末にはA.チェザルピーノの《植物学De plantis libri》がまとめられた。コルドゥスV.CordusやボーアンG.Bauhinらが薬物学としての植物学を大成させていくのと並行して,17世紀末から18世紀初頭にかけて,レイJ.RayやトゥルヌフォールJ.P.de Tournefortが種や属の概念を確立し,18世紀のリンネによる近代植物学への基礎固めが始められることになる。…

※「チェザルピーノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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