日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオフェノール」の意味・わかりやすい解説
チオフェノール
ちおふぇのーる
thiophenol
芳香族チオール(メルカプタン)を代表する化合物。ベンゼンチオール、フェニルメルカプタンともいう。フェノールの酸素原子のかわりに硫黄(いおう)原子の入った化合物。メルカプタン特有の悪臭がある。塩化ベンゼンスルホニルC6H5-SO2Clを硫酸中で粉末状亜鉛により還元して得られる。無色の液体。水には溶けにくいが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルにはよく溶ける。酸性はフェノールよりも強い。一般のメルカプタンと同様、金属塩のメルカプチドC6H5SMを生じる。空気中で酸化されるとジフェニルジスルフィドC6H5SSC6H5(示性式。構造をより詳しく示す式)を生じ、さらに激しい条件で酸化するとベンゼンスルホン酸になる。水素を放出してジフェニルジスルフィドC12H10S2(分子式)になりやすいので還元剤としても用いられる。
[務台 潔]